MBA戦略模擬授業!産業・経営分析ツールとケーススタディ

ねこ君
MBAってカッコいいよね。おれ、MBA卒業して戦略コンサルになりたいんだ。
ねこ君
ああ、けどまずは英語の勉強しないと・・
にゃんこ先生
さて、今日はMBAで学ぶであろう、経営分析のツールを紹介する。
にゃんこ先生
5 ForcesとSWOTって聞いたことあるかな?
にゃんこ先生
MBA卒のテンペストが、戦略の基礎を実例と共に解説するぞ!

 

この記事の著者: Tempest

  •  横浜在住、40歳台前半の男性
  •  米国でMBAを取得、専攻は金融
  •  投資銀行マン等を経て、財務・法務系の翻訳家として独立(言語は英語・タイ語)
  •  Tempestの英語学習の記録

はじめに 農婆

ゴーン氏のスキャンダルのニュースを見ていた際、ふと経営トップの不祥事つながりで、かつて一世を風靡していまや没落している英会話学校の「NOVA」を思い出しました。

 

遠隔電話システムによる「お茶の間留学」という画期的な概念「通わなくても自宅で英会話レッスンを受講出来る」を打ち出した英会話学校で、TVコマーシャルではNOVAうさぎや「農婆」などコミカルなキャラが人気を集めました。

が、受講料前払金の流用などの不祥事をきっかけに一気に衰退してしまいした。経営が破綻したのは、このようなシステムへの設備投資が重くのしかかり資金繰りに困って怪しいことをしてしまったためです。

 

ちなみに経営トップが自宅を会社に購入させたり、NOVAの当時の社長のように本社に豪華なバーを作ることを英語では”perks”と言い(”perquisite”、「役員の特権」の口語)、MBAのファイナンスの授業でも論じられることがあります。

この他にも「月謝が高い割にあまり効果がないんでは?」「講師は不良外人ばかりでは??」といわくつきながら根強く続く「英会話学校産業」。「英語ペラペラ」という日本人全員の畢生の願いに支えられた業界です。実際には通ってもほとんど叶わないので諸行無常ではあります。

 

産業・経営分析ツールについて

さて、本稿ではこの日本の英会話学校産業を題材とし、MBAでよく扱われる産業・経営分析ツールで実際にケーススタディをやってみたいと思います。これからMBA留学を志す方の簡単な予習のようなものです。扱うツールとしては以下の二つです:

 

産業分析ツール: 5 Forces

以下の5つの観点から特定の産業がいかに「魅力的」かを測るフレームワークです。既存業者なら拡大・縮小(撤退)の判断に、まだ参入していない投資家・事業体にとっては参入の判断に資することとなります。産業分析ツールとしてはこちらが一番有名です。

  • 買い手・顧客の交渉力: 買い手の立場が強い(弱い)ほど同産業の魅力が小さい(大きい)こととなります。
  • 売り手・供給企業の交渉力: 売り手の立場が強い(弱い)ほど同産業の魅力が小さい(大きい)こととなります。
  • 新規参入業者の脅威・参入障壁: 参入障壁が高い(低い)ほど同産業の魅力が大きい(小さい)ことになります。
  • 代替品の脅威: 代替品の脅威が同産業の大きい(小さい)ほど魅力が大きい(小さい)ことになります。
  • 既存企業間の敵対関係・競争: 競争が激しい(少ない)ほど魅力が小さい(大きい)こととなります。

これは高名なハーバードのマイケル・ポーター教授が考案したものです(純アカデミックで、ビジネスマンとしての実務経験が無いのにこういうツールを開発しているのも面白いところです)。詳しく知りたい方は、「競争の戦略」という題名で日本語訳もありますので、そちらで予習をして頂きたく存じます。

 

経営分析ツール: SWOT

個社の経営分析ツールは無数にありますが、まずこれが一番有名です。以下の4つの観点から経営の立ち位置を分析します。

  • # 強み(Strengths)
  • # 弱み (Weaknesses)
  • # 機会(Opportunities)
  • # 脅威(Threats)

最初の2つが個社に特有の状況で、後ろの2つが経営環境です。

こちらも特定の考案者は居ませんが、ハーバード発です。

 

本稿では、仮想の英会話学校(大手)の経営戦略スタッフが上記の二つを用いて産業・経営分析を行い、経営陣に発表するというシチューエーションでMBAの日本人学生達(経営戦略スタッフの役)が学期の最後にパワポで戦略論の教授「レッド・ポーター博士」(日本人学生の間で「赤帽博士」とあだ名されている。経営陣の役)に発表するという状況を想定しています。

PPTの部分(発表内容の箇条書きによる要約)は英語版も掲載してみます。

 

なごやかな発表風景

[PPT P1, Title]

On the analyses of the English-conversation industry of Japan our company “VAVA” is in, and how we are performing in it

 

我が社「ババ」が戦っている日本の英会話産業と、我が社がどれぐらい頑張っているかについての分析について

嵐(学生)
ポーター社長、本日はご多忙の中お時間を戴き・・・

赤帽先生
教授: いや、「レッド」でいい。前置きはいいから早速始めてくれ。

 

[PPT P2, 5 Forces introduction]

5 Forces analyses on the attractiveness of the industry

How to measure it: to each of the given 5 factors, the score of 5 (most attractive) to 1 (least attractive) will be given for the average with equal weights to be calculated

 

同産業の魅力度に関する 5 Forces分析

測定方法: 5つの各要素に対し5点(非常に魅力的)~1点(全く魅力的ではない)の評点を与え、同じウェイトで平均を計算する

嵐(学生)
え~、この5 Forces分析というものは・・・

赤帽先生
俺が教えたんだから分かってる。本論に入り給え。

 

[PPT P3, 5 Forces 1]

Buyers’ / customers’ bargaining power

Conclusion: buyers have a very strong bargaining power

Score: 1

  • Commodity, homogeneity, difficulty to differentiate [-]
  • Tuitions high (if not prohibitively) for hiring costs, with switching cost of buyers low [-]
  • Accordingly, low cost / performance ratio for buyers [-]
  • Deemed slightly dubious for past scandals [-]
  • Many of substitutes [-]

 

買い手・顧客の交渉力

結論: 買い手が交渉力の方が非常に強い

評点: 1

  • コモディティ、同質性、差別化の難しさ [-]
  • 高い月謝(教師への賃金のため)、買い手の切替え(別の学校へ移る)コスト低 [-]
  • よって、低いコスパ [-]
  • 過去のスキャンダルでやや疑われている [-]
  • 代替品多数 [-]

嵐(学生)
えー、消費者の立場からしますと・・・

赤帽先生
学位を与えるいわゆる学校や、資格を賦与する機関と違い、「生殺与奪」の権限がないのも買い手の立場を強めているのでは?

 

PPTその場で追加:

  • Accreditation issue [-]
  • 学位・資格賦与の問題 [-]

 

[PPT P4, 5 Forces 2]

Sellers’ / suppliers’ bargaining power

Conclusion: suppliers have a very weak bargaining power

Score: 5

  • “Vagabond” foreigners abound, easy to hire and dispose of [+]
  • Can be hired on part-time basis [+]
  • On the other hand, not that cheap for their being “a teacher” [-]
  • No central sourcing [-]
  • Low intellectual capability, with few with a college diploma [-]

 

売り手・供給企業の交渉力

結論: 売り手が交渉力の方が非常に弱い

評点: 5

  • 「日本でブラブラ」している外人、使い捨てで雇える [+]
  • しかもバイトで雇える [+]
  • 一方一応「教師」なのでそう安くもない [-]
  • 集中購買不可 [-]
  • 低い知的能力(大卒はほとんどいない) [-]

嵐(学生)
昨今日本好きで日本にずっと居たいと思っている・・・

赤帽先生
ここでは君達の方が「外人」だ。さて、その「外人」も英会話学校が無数にあるともっとブラブラ出来る、とは思わないか?

 

PPTその場で追加:

  • Low switching cost (“quitters”) [-]
  • 教師側も切替コストが低い(英会話教室は沢山あるので、いやならすぐ辞める) [-]

 

[PPT P5, 5 Forces 3]

Threat of new entrants / entry barrier

Conclusion: rather easy to enter

Score: 2

  • Cost structure: wage as variable; rent, advertisement as fixed
  • Where no intense capital investment is required as for manufacturers (low entry barrier) [-]
  • Where advertisement is costly to establish a well-known brand [+]
  • Hard to differentiate [-]
  • Mega-brand effective like ours [+]

 

新規参入業者の脅威・参入障壁

結論: 比較的参入し易い

評点: 2

  • コスト構造: 変動費: 教師への賃金 / 固定費: 家賃・広告費用
  • ここで、製造業のように莫大な資本投下は要らない(参入障壁低) [-]
  • 一方で認知度の高いブランドを確立するための広告費用はかなり掛かる [+]
  • 差別化しにくい [-]
  • 我が社のようなメガ・ブランドは有効 [+]

嵐(学生)
えー、我が社のマスコット・ガールである「サトコ」は・・・

赤帽先生
教師は何か特別な訓練を受ける必要があるか?

 

PPTその場で追加

  • No special know-hows needed [-]
  • 特別なノウハウは要らない [-]

 

[PPT P6, 5 Forces 4]

Threat of substitutes

Conclusion: while there are some, “face-on conversation” is still appealing

Score: 3

  • So-called schools [-]
  • Preps [-]
  • Other non-school programs: “Speed Learning”, “NHK” [-]
  • “Boy-meet-girl clubs” [-]
  • Willingness to study “by yourself” [-]
  • “Look and feel” [+]

 

代替品の脅威

結論: 色々あるものの、「対面型会話」はなお強い

評点: 3

  • いわゆる学校 [-]
  • 塾等 [-]
  • その他の非通学型プログラム: 「スピードラーニング」、「NHKラジオ講座」 [-]
  • 「留学生との出会い」サークル [-]
  • 「独学」 [-]
  • 実際に目の前で話すこと [+]

嵐(学生)
例えば神田外大など・・・

赤帽先生
「IT」は?(ITが代替品の脅威に与える影響は?)

 

PPTその場で追加

  • IT rivalry: “Studying abroad at your living room”, “Studying abroad through your smartphone”, “futuristic AI teachers” [-]
  • ITライバル: 「お茶の間留学」、「スマホ留学」、「近未来的なAI教師」 [-]
  • 評点変更: 3 > 2

 

[PPT P7, 5 Forces 5]

Hostility / competition among existing players

Conclusion: rather tough competition with many a player

Score: 2

  • Innumerable players [-]
  • With needs sustained, the whole “pie” not on the bloating side [-]
  • Again, homogeneity [-]
  • Again, high advertisement costs [-]
  • Again, brand effective [+]

 

既存企業間の敵対関係・競争

結論: プレーヤー数が多く、競争もかなり激しい

  • 無数のプレーヤー [-]
  • ニーズはなおあるが、「パイ」総体は膨れ上がっていない [-]
  • 再々ながら、同質性 [-]
  • 再々ながら、広告費重い [-]
  • 再々ながら、ブランドは効く [+]

嵐(学生)
我が社以外の代表的な競合を挙げますと・・・

赤帽先生
我が社の事業ポートフォリオは分散されているか?

 

PPTその場で追加

  • “Pure play” (lingering) [-]
  • 専業業者(撤退しようとしない)

 

[PPT P7, 5 Forces summary]

Summary: not so attractive with the average score of 2.2

 

サマリー: 平均2.2点で、そう魅力的とは言えない

 

[PPT P8, SWOT introduction]

SWOT analyses on our positions based on aforementioned 5 Forces analyses

 

前述の5 Forces分析に基づき、我が社の立ち位置についてSWOT分析

 

[PPT P9, SWOT 1]

Strengths

  • “Satoko”, our mascot girl, “now not afraid of speaking English anymore!!”
  • Measurements / follow-ups

 

強み

  • 我が社のマスコット・ガール「サトコ」、「もう英語を話すのは怖くない!!」
  • 効果測定、フォローアップ

 

[PPT P10, SWOT 2]

Weaknesses

  • “Satoko”, our mascot girl, so expensive for a girl
  • Accordingly, our inability to hire high-quality foreigners

 

弱み

  • 我が社のマスコット・ガール「サトコ」、たかが女の子一人でこんなに高価
  • この出費のせいで質のいい外人を雇えない

 

[PPT P11, SWOT 3]

Opportunities

  • Globalization, 2020 Olympic Games
  • “Mixed feeling” toward fluency in English of Japanese race
  • Satoko effect for potential “yes-we-can” demands

 

機会

  • グロバール化、オリンピック
  • 日本人の根強い英語ペラペラへの憧れ
  • 「あたしもやれば出来る!!」のサトコ効果

 

[PPT P12, SWOT 4]

Threats

  • Pure plays with intra-train advertisement as opposed to our on-TV
  • Speed Learning not so speedy
  • Failure to achieve results (generally)

 

脅威

  • 我が社のコマーシャルに対し吊革広告で対抗してくる競合
  • 実はあまりスピーディでもないスピードラーニング
  • 受講しても結果が出ない(一般に)

嵐(学生)
えー、「サトコ」が芸能界デビューしたきっかけはTKB48と呼ばれる・・・

赤帽先生
「IT」は?(ITが脅威に与える影響は?)

 

PPT SWOT4にその場で追加

  • Studying abroad domestically
  • 国内で海外留学

 

[PPT P13, Action]

Recommended actions to take (to differentiate ourselves within such homogeneity)

  • Target the low- / middle market (non-business / daily conversation) more with the increased presence of Satoko
  • Consider “RIZAP” model of “being committed to results” (with tuitions to be paid back for failure to achieve their milestone)

 

推奨されるアクション(同質化の中で我が社を際立たせるには)

  • サトコのプレゼンスをもっと増大させ、よりロー・ミドル市場(非ビジネス、日常会話)をターゲットにする
  • 「ライザップ」の「結果にコミット」式モデルの導入を検討(生徒さんがマイルストーンを達成出来ない場合、返金)

嵐(学生)
えー、「サトコ」はTKB48を「卒業」した後、新恋人説が浮上しており、この点我が社のブランド・イメージ・・・

赤帽先生
「IT」は?(ITを駆使したアクションは無いのか?)

 

PPTにその場で追加

  • Ask IBM to introduce AI Brits to us
  • IBMにAIイギリス人を紹介してくれるよう頼む

 

このグループワークに対する赤帽先生の評価は「B-」でした(ギリ合格)。

 

まとめ

さて、以上のような「分析ツールの実際のケースへの適用」ということをMBAではやらされます。私が宿題で5 Forcesをやった時は日本の「水商売産業(ホスト)」をやり、やはりB-をもらいました。

一点アドバイスとして、「与えられたフレームワーク通りにやり、あまり創造的にならない」のが良いグレードを取るコツだ、と申し上げておきます。

私のMBAの母校、イリノイ大学は全E-learningによるMBAプログラムなるものを開発しようとしています。お茶の間MBA、スマホMBAの時代も到来するでしょうか・・・。

 

にゃんこ先生
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にゃんこ先生
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