MBAファイナンス模擬授業!資金調達・バリュエーションについて

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この記事の著者: Tempest

  •  横浜在住、40歳台前半の男性
  •  米国でMBAを取得、専攻は金融
  •  投資銀行マン等を経て、財務・法務系の翻訳家として独立(言語は英語・タイ語)
  •  Tempestの英語学習の記録

会社の目的とは?

サラリーマンをやったことがある人も無い人も、一般に「会社」と聞くとどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

または、「会社とは何か」と聞かれたらどう答えるでしょうか? 客観的・機能的には、そもそも「会社」とは何をするためのものでしょうか?

 

会社とは、

  • 資金調達: 大きな額の資金を集め・プールし、
  • 投資・事業活動: 投資・事業をして儲けて、
  • 利益還元: 出資元(投資家)に利益を付けて返すボックス

というのが本来の定義です。

 

本稿では、上記のうち「大きな額の資金を集め・プールし」(資金調達)の部分の概略をご解説したいと思います。

 

資金調達手法 負債 vs 資本

MBAでは必修ですが、会計学における損益計算書は良いとして、貸借対照表(バランスシート)の考え方は最初取っつきが悪いものです。一つに「貸方」だの「借方」だのという用語のネーミングが悪いことがあります。

こちらは忘れて頂き、分かり易い用語でざっくり解説します。

 

会社を設立して資金を集め(資金調達)、工場を立ててストロベリー・チョコレートを製造・販売し(投資・事業活動)、儲けて返す(利益還元)という単純な例を考えます。まず工場を作るのに100ドル要るとします。

 

これをバランスシートで示しますと・・・

まず創業者・オーナーが自分の貯金をはたいて70ドルは自分で用意しました。足りない分の30ドルは他人(近くの信用金庫)から借りました。これが右側の「調達手段」の部分です。その100ドルで工場を建てました。これが左側の「運用手段」の部分です。

こう聞くと、貸方・借方などと難渋な用語を聞くより分かり易く、何故コラムが2つある(複式簿記)のかもすんなり理解出来るのではないでしょうか?

 

この資金調達の枠組みについては、資本主義の先進国ではビジネスを促進するために法的にしっかり整備されています(日本では会社法)。特に、オーナーが貸した側の信用金庫に返す・返さない、返済せずに夜逃げするな、という観点(債権者保護の観点)につき細かく制定されています。

簡単に言うと、工場の運営の結果30ドル儲けが出たら、それでオーナーが会社を畳んで以前から欲しかったハーレーを買う「前に」先に信用金庫に返してあげなさい、その後もっと儲けが出たら自由にしなさい、という感じです。

 

もう少し厳密に定義してみます。

まず一般・広義に「証券」と言うと、会社にお金を預けました・出資しましたよという「証拠」の書面ということになります。銀行がお金を貸す場合は「借用書」であったり、広く資金を借入の形で募る場合は「社債券」であったりします。

一方オーナー含む投資家が元手として突っ込む場合の証拠が「株券」となります。

 

さて、法的ルール上の貸す側・投資家側から見た「負債」と「資本」の違い、メリット・デメリットを挙げてみます:

 

負債

  • 株式に「優先」する: 法的に利払・元本返済は配当・精算による財産返還に優先する。
  • その代り、利払・返済額は決まっている(アップサイドが限定されている)。
  • 経営には基本関与出来ない(飽くまで他人・第三者)。
  • 満期になると元本が返って来る。

→ローリスク・ローリターン

 

株式

  • 負債に「劣後」する(上記の優先する、の逆)。
  • その代り、負債に対する利払・元本返済義務を果たした後の残りは全てもらえる。
  • オーナーシップ・経営の意思決定権限(議決権)を持つ。
  • 基本元本は返ってこない(資金を「コミット」しておくため)。

→ハイリスク・ハイリターン

 

という感じです。このため、お金を突っ込む立場としてどちらの経路の方がいい、ということは御座いません。

 

株式・借用書そのものを売り買いする

さてまたテクニカルになりますが、借用書や株券を個人のタンスに入れて自分のものにしておくのが「非上場・未上場」あるいは「閉鎖会社」(鎖国)であり、こちらの方がオリジナルです。

一方会社の規模が大きくなるにつれ、証券の一部又は全部を一般大衆にも「おすそわけ」するのが「上場」あるいは「公開会社」(黒船以後)です。

 

資本については「基本元本は返ってこない」と書きましたが、株式を「転売」することで元本を回収することは可能です。

未上場の場合、引き取ってくれる相手を必死で探さなければなりませんが、上場している場合市場で不特定の相手に好きな時に売りつけられるので、これも大きな利点でしょう。

 

さてチョコレートの例で見てみましょう。

事業が軌道に乗って工場をさらに拡張したく追加資金が50ドル要るが、オーナー自身のポケットマネーはもうないとします。ここで、さらに信用金庫から借り入れてもいいのですが、株券をもっと刷って近所の人に買ってもらうことも出来ます:

これで返済義務のない追加資金調達が出来たことになりますが、今までワンマン経営だったところ運営ミーティングに近所の人たちが顔を出すことになり、儲けもシェアしなくてはならなくなります。

そして、気前良く株券を配り過ぎて上記の「おすそわけ」の額が「ポケットマネー」の額を超えると・・・ミーティングの議長の座を追われることになります。

テクニカルに言うと、議決権は株式の保有量に比例するため、過半を譲ると経営権を失うことになる、となります(申し上げていることはお分かりかと)。

 

バリュエーションとは?

さて、借用書や株券などの証券を譲る際にいくらで買ってもらうか? という問題があります。

 

まず負債側の場合、いくらというより利子率をどう設定するかという問題になりますが、主に「予想デフォルト率」(倒産・夜逃げの確率)で決まります。

詳述はしませんが、こちらは統計的にアプローチ出来るので資本側よりラクです。

世で謂う「格付け」がこれで、倒産する確率がコレコレ(ランクが低いほど高い)なので、利子率はコレコレが妥当(同じくランクが低いほど高い)という感じです。

 

一方、資本側はざっくり言うと「将来の儲けがどれくらいになるか」に基づいてそろばんを叩くのですが、未来のことなのでどうしても当て推量になり中々はっきりしません。

特に上場している場合は市場で需給関係に基づき値段が付けられているので、必ずしも正しいとは限らないものの目安があるのですが、未上場の場合は五里霧中です。

 

さてここで宝くじの値段をいくらにするか、ということを考えてみます。

5枚に1枚(20%の確率)で1,000円当たるが他はハズレというケースですと、中2レベルの計算で1,000円 X 0.2 = 200円が「期待値」なので価格は200円が妥当、但し運営費を上乗せして220円で売る、という感じです(このため買い続けると長期的には損をします)。

競馬のオッズも同じようなことが言えます。

 

株式についても同じような考えが適用されており、将来の儲けの「期待値・平均」を現在の価値に割り戻して足し上げたのが株券の妥当なお値段、という感じです。

株式のお値段に関する「比較的」科学的な算定方法を「バリュエーション」(株式価値評価)などと呼び、MBAでは必修中の必修です。し、一見難しそうで案外簡単です(逆に、お手軽に使えるように設計されています)。

 

「DCF法」と「マルチプル法」というものが主流ですので、ダイジェスト版をご紹介します。

 

DCF

何をしているかざっと説明しますと・・・

  • 将来の儲けの予測(期待値)
  • 各々現在価値に引き直す(利子の分将来の100円は現在の100円より価値が低いため、調整している、という感じ)
  • 合計し、優先権のある信金の取り分を引いて株式価値

 

マルチプル

何をしているかざっと説明しますと・・・

  • 上場しており株式に値段が付いている「同業他社」(お菓子メーカー)の時価総額 / 儲けの倍率を求める(儲けの何倍ぐらいで取引されているか見る)。
  • 平均し、非上場である対象会社の儲けに掛け直して株式価値を推定している。

 

DCFをかなり詳しく説明した「DCFについて」という稿が別にありますので、詳細は是非そちらで予習下さいませ。

 

M&AとIPO

さて高給で悪名高いウォール・ストリートの投資銀行は何をメシのタネにしているでしょうか。

投資銀行と聞くと「投資する」銀行のように聞こえますが(そちらはファンド)、そうではなく「投資させる」銀行です。平たく言うと株式を他人が売買するのを手助けして手数料をがっぽり儲ける、という感じです(時に不必要に)。

形態は色々ありますが、有名なのはアルファベット3文字の「IPO」(Initial Public Offering)と「M&A」(Merger & Acquisition)です。これは資金調達・株式の売買のタイミング・目的に関した呼称です。

チョコレートの例で大雑把に説明しておきます。

 

IPO

「イニシャル」とある通り、自分で独り占めしていた会社を、株券を沢山刷って近所にばらまくことに喩えられます。

世の中的には初めて上場し、さらなる資金を広く募るため公開会社とすることを言い、この後株式が市場で流通することになります。

 

M&A

お隣さんに工場を丸ごと譲ることに喩えられます。世の中的には過半の株式を売買し、支配権を移転させることを言います。

非上場会社に多い取引ですが、上場会社でも市場で株式を買い占めて支配してしまう、ということも時にあります。「マージャ―」は合併で「アクイジション」は取得・買収の意です(通常ほとんど後者です)。

 

まとめ

箇条書きにて。

  • 「会社」とは儲けるために資金を集め、儲けて返す魔法の箱。突っ込んで2倍になって返ってて来ることもあれば一銭も返って来ないこともある。
  • お金を突っ込む人に後先の分類がある。
  • 先に取る方が安全だが額は一定で、後に取る方は残りで大儲け出来る可能性があるし、全然残らないこともある。
  • いくら突っ込むのが妥当かは思惑が働く所で、一応目安の計算ツールもある。
  • 会社をでっかくするのに近所で広く募金活動をしたり、もう十分儲けたからお隣さんに事業を譲って悠々引退生活を送ることもある。

 

テクニカルノート

  • 自己株式

株式の元本については投資家側から返せと請求は出来ませんが、転売の他会社側が買い取る(金庫株・リパーチェス)こともあります。

効果的には売るかどうか投資家に判断権限がある以外大雑把に配当と同じですが、税金面の効果がやや変ります・・・。配当は額自体に課税されますが、転売・買取の場合キャピタルゲインに対してのみで、一般に配当より有利です。

 

  • 優先株式

「優先株式」と呼ばれ、負債に劣後するが普通株式に優先して一定額の配当を破産しない限り必ずもらえる・議決権は基本ない・元本は返って来ないことも満期で買い取られることもある、という株式と言いながら性質的に負債に近い証券もあります。

 

にゃんこ先生
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