




この記事の著者: Tempest
- 横浜在住、40歳台前半の男性
- 米国のMBAを取得、専攻は金融
- 投資銀行マン等を経て、財務・法務系の翻訳家として独立(言語は英語・タイ語)
- Tempestの英語学習の記録
目次
英語リスニング上達の極意

本稿では「お金を一切掛けずに」効率良くリスニング力をグンと伸ばす方法をご紹介したいと思います。
筆者は英語の主要4スキル: 「読む・書く・聞く・話す」力を伸ばす方法を読者のレベルに応じて本サイトに色々投稿しております。
特に、コスパ面を勘案したメソッド・教材の比較をしており、本稿に似た内容のものですと「英会話スクール vs NHKラジオ英会話」という稿で「スピーキング & リスニング」という音声面の学習に関するメリット・デメリットの比較をしております。
こちらではNHK(ラジオ講座)は安いが一方通行の講義型であり、英会話学校は高いが対人・双方型のレッスンなのでまず引き分け、という軍配を上げております。こと会話力に興味がある方はそちらも是非ご覧下さいませ。
本稿では「リスニング」に絞り、高名な「スピードラーニング」とNHK提供のコンテンツを比較した上で、具体的にどうしたらよいかご紹介したいと思います。
対象の読者としては、現在中級~上級レベル: 英検2級 / TOEIC600以上で、特にビジネス英語の聞き取りに強くなりたい、もっと言うとビジネスの内容がメインでリスニングの占める割合が50%もあるTOEICの点をいま一歩伸ばしたい!! という方を対象にしています。
私は小5で始めた公文でのABCの手習いから数えて30年以上英語を学習しています。
正直、自己紹介にある通り翻訳業で何とか食えるぐらいなので読み書きはまずまずのレベルに達しましたが、音声面 = リスニングはまだ日々練習しており「どうもなぁ~」と首をかしげております。
が、仕事で「英語動画の聞き起し→英日翻訳」という依頼がお得意先から時々あり、完璧ではないながら文句なく検収されておりますので「継続的にやればある程度以上はいけます!」ぐらいは保証致します。
以下紹介するメソッドは今でも私が日々実践しているもので、かなり効きます・・・。
TOEICがリスニングのせいでいまいちの方はだまされたと思ってやってみて下さいませ。
NHK英語ニュース vs. スピードラーニング
スピードラーニングはスキット = 読み上げる文章、発音および使い易さともに、ことリスニングという点では非常に優れています。
但し、年に数十万円もする英会話学校ほどではありませんが、ある程度の出費を強いられます。
一方NHKがオンラインで提供している或るコンテンツは無料で、かつ同じ程度かそれ以上の効果が得られます。
このため、スピードラーニングも悪くありませんが、タダなのでNHKをオススメします。以下、具体的に見てみましょう。
スピードラーニング(販売終了)

コンテンツ
私は過去リスニングに苦しみ、有料・無料 / 市販・通販・パブリックのものを含め様々な教材に手を出しました。
提供元は忘れましたが、20年ほど前に以下のようなものを試しました。
高名なサスペンス小説家、シドニー・シェルダン書下ろしの中編を1教材 / 月、12回 / 年シリーズでCDと英文が書かれているステキなテキストが毎月届き、渋いイギリス人のおじさんが読み上げる朗読をテキスト片手に聞く、というものです。有料ですが悪くありませんでした。
現在では、アプリ版の提供となり、様々なジャンルの英会話シチュエーションが月額課金で聞き放題という方式を取っているようです。

このように、ネイティブの読み上げを吹き込んだメディア + 目で読んで分かる英文(+ 場合により和訳)、という組み合わせはリスニング教材の典型的なもので、基本的にはこの教材だろうがスピードラーニングだろうがNHKだろうが全てコレ式です。

スピードラーニングも黎明期のもの・・・「カセットテープ」 + テキストでした・・・を同時期に試したことがあります。中々優れもの、という印象です。
が、やはりNHKラジオ講座が教材1月分400円代と非常にお安く、乱暴な言い方ですがきっちりした教材なら基本何でも同じなため、最後NHKに落ち着きました。
さてNHK同様スピードラーニングにも基礎~ビジネスレベルまで様々ありますが、現在提供されているビジネスシーンにおける会話のものをネットで少し拾ってみました。
[英語]A: No, sorry. I’m busy. I have a special conference to attend.
B: What about Wednesday?
A: That’ll be fine. I’ll be free all day.
B: OK, Mr. Amash. I’ll try to set up the meeting for Wednesday afternoon.
[和訳]A: 済みません。ちょっと忙しくて。どうしても出席しなくてはいけない会議がありまして。
B: ですか。では水曜日ならどうでしょう。
A: 水曜日なら大丈夫です。丸一日空いてます。
B: ならそれで。では水曜日の午後にミーティングをセットしておきます。
・・・という感じで、Aが男性でBが女性です。綺麗な正統ネイティブの発音です。
では、「基本どんな教材でも全部同じ」のはずですが、スピードラーニングの他の教材との違いを敢えて挙げると何でしょうか。
記憶ですと、英語だけで通すパートと、英語の後に一文ずつ和訳が挟まれるパートが用意されていました。同商品のHPを見るとこの方式は変わっていないようです。
上記が前者だとすると(和訳はテキスト参照としている)、後者は:
A: No, sorry. I’m busy. I have a special conference to attend. / 済みません。ちょっと忙しくて。どうしても出席しなくてはいけない会議がありまして。
B: What about Wednesday. / ですか。では水曜日ならどうでしょう。
A: That’ll be fine. I’ll be free all day. / 水曜日なら大丈夫です。丸一日空いてます。
B: OK, Mr. Amash. I’ll try to set up the meeting. For Wednesday afternoon. / ならそれで。では水曜日の午後にミーティングをセットしておきます。
という感じで流れるイメージでしょうか。
曰く、英語を聞いた後に母国語ですぐ意味を認識することで、リスニング力および会話力を含めたオーラル面の能力が自然と格段に上がるそうです。
スピードラーニングの効果は?

「聞き流すだけで自然と話せるようになる!」というのがスピードラーニングの謳いで、これに惹かれて手を出す人が多く、バカ売れしているものと思われます。
果たしてこれは本当でしょうか? CMの石川遼のスピーキングを聞いている限り、「あれを喋れるというなら喋れるようになる」というのが私の感想です。イーオンの石川さとみよりはうまいですね。
積極的にアウトプットの練習をするわけではないので、聞き流すだけで英語ペラペラ、とうのは誇張があります。実際、ネットでの口コミ・評をいくつか見てみましたが、「この謳いはやや大げさ・そこまでは行かない」というのが大半です。
しかしなお売れている、というのはスピーキングはともかく少なくともリスニング教材としては優れている、という証左でしょう。
まぁそれでも悪くはないな / 続けてもいいかな・・・というのが大方の感想かと思います。実際私が聞いても内容・発音とも中々良いと感じます。
さて英語の後にすぐ日本語訳が来る、というメソッドについてもう少し科学的に考察してみます。
英語と構造が似ている漢文と日本語を比べてみます。「虎の威を借るキツネ」を例に挙げます。
中: 狐假虎威
英: Wielding Tiger’s Fierceness
日: 虎の威を借る
中: 子無敢食我也
英: You should not eat me up.(または You are not advised to eat me up.)
日: 汝、あえて我を食うなかれ
このように、中国語は英語と同じく基本「SVO」の構造 = 「否定句・動詞が目的語の前に来る」であり、一方日本語は「SOV」 = 「動詞・否定句が目的語の後に来る」となっています。
この例でスピードラーニングの対中国人向けと日本人向けを比べますと・・・:
対中: You should not eat me up. / 子無敢食我也
対日: You should not eat me up. / 汝、あえて我を食うなかれ
中国語の場合並び・構造がほぼ同じなため、すぐ訳が続くとすんなり頭に入りそうです。一方日本語の場合ひっくり返っているためどうか、ということはあります。
外国語学習において、読んで・聞いてひっくり返さずに(かつあまり訳さず)そのまま理解するのが理想、とされています。
が、最初は母国語で内容を理解してから聞いて捕捉する、という学習から始まります。ここで、中国語の場合構造が似ているので一文ずつすぐ訳が来るとすっと頭に入るかもしれません。
一方日本語の場合、別に英文と和訳がある程度まとまっていても、一文ずつ逐一入っていても構造がそもそも違うため「すっとは」入って来ず・・・あまり変わらない気がします。
費用

スピードラーニングの英語コースの値段をネットで調べてみました:
ライトプラン: 980円 / 月
べシックプラン: 4,180円 / 月
ベーシックプランは家族3人までシェアが可能、さらに月に4回(1回五分)の電話英会話及び、英語以外の語学学習にも対応しています。
年に数十万もする英会話学校alphaるかに安いですが、ある程度の出費は強いられます。

NHK英語ニュース

コンテンツ
NHKの「ニュースで学ぶ現代英語 」というNHKの優れたHP学習教材をご紹介します。ネット接続さえあれば無料ですぐ使えます。
記事はサイトから、音声はラジオのバックナンバーが聞けるらじるらじるから聞くことができます。
比較的平易な日本に関するトピックの短いニュース(2~3分程度)を、ネイティブ並みの日本人ニュースキャスターおよびAIが平易なスピード = 速すぎず遅すぎないスピードで読み上げる、というもので平日に毎日1ニュースずつポストされます。
内容はビジネス・政治寄りのものがほとんどです。
これも「典型的」なメソッドで、英文と和訳が付いています。


4/8(月)にポストされたものを見て見ましょう。
[英文]“Reiwa” is a name that will be on the lips of most Japanese today, and it will be for years to come. It’s the name the Japanese government has selected for the new era, which is set to start when Crown Prince Naruhito becomes the new Emperor on May first. The announcement was highly anticipated here because it will define the years ahead, as well as play a daily role in people’s lives.
(Yoshihide Suga / Japanese Chief Cabinet Secretary)
“The new era name is Reiwa.”
The chief cabinet secretary says the new name was taken from “Manyoshu,” the oldest existing anthology of Japanese poetry. It comes from a passage that can be translated as: “In early spring, the air is fresh and the wind is calm. The plum flowers are blooming like a beautiful woman applying white powder in front of the mirror, and the fragrance of flowers is like that of robes scented with incense.” The prime minister says the name represents the hope that every Japanese person will achieve their aspirations, just like a plum flower flourishing after a severe winter.
[和文]きょうから何年にもわたって、ほとんどの日本人が「令和」という名称を口にすることになります。令和は、皇太子さまが新天皇となられる5月1日から新しく始まる時代の元号として、日本政府が選んだものです。日本中が、この発表に大きな関心を寄せていました。それは、新しい元号がこれからの年月を(1つの時代として)特徴づけるとともに、人々の生活の中で日常的に使われることになるためです。
菅義偉官房長官は、「新しい元号は令和です」と発表し、この元号は現存する日本最古の歌集「万葉集」から引用したことを明らかにしました。
新元号の出典となった一節は、次のように訳すことができます。「春の初め(の良い月)に、空気は新鮮で、風は穏やかに吹いている。梅の花は美しい女性が鏡の前でおしろいをつけているかのように(白く)咲き、花々の香りは身をかざる衣にたきしめた香のように薫っている。」安倍晋三総理大臣は、「令和」という元号は、厳しい冬のあとに咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人がそれぞれの夢や希望を花開かせることができるようにという願いを表したものだと述べました。
英文の方には、やや難しい単語はカーソルを当てると訳がポップアップするようになっており、辞書を引く必要はありません。例えば「incense」には「名詞] 香(こう)、香料」と出て来ます。
和訳も見事かと思います。なお雰囲気的には日本語が先にあって英訳している感じもしますが、英文的にはいずれにせよ問題ありません。
英語力のレベルによってはやや難しいかもしれませんが、この辞書機能と全訳があるため、英検2級 / TOEIC 600以上なら聞く前にリーディング・解読をしておけばすんなり耳に入るはずです。
NHK英語ニュースの効果は?
NHKなので内容・文法面とも正統派でグッドです。
発音も非常に綺麗なため、スピードラーニングとの違いは逐次訳版があるかないかだけです。
費用
「タダ」無料です。
比較とおすすめ

このように、逐次訳があるかないか / 会話形式か散文形式か、という違いがあるのみで、双方:
- ビジネス・政治英語である。
- 内容・文法面はよろしい。
- 発音もよろしい。
- 目で確認出来る参照用の対訳もある。
で、リスニング教材としては同レベルです。
NHKニュースの方がコンテンツ的にはやや難しいかもしれません。逆に言うとスピードラーニングの場合、ビジネスレベルというにはやや簡単過ぎます。
やっぱり会話だよ~、という方には本稿はリスニング力に話を絞っている点、再度申し上げておきます。
TOEICやTOEFLでいうと、会話形式 / 読み上げた文章に対する質問、という設問形式が大別してあり後者の方がなべて難しく、NHKはそちらを(も)カバーしていて「大は小を兼ねる」ものとお考え下さい。
以上の理由で、スピードラーニングとNHKニュースを比べるなら同等の効果で無料の分後者をオススメします。
では、何故同じような効果がありそうなのに有料のスピードラーニングがもてはやされて、NHKのこのような優れたコンテンツは無料なのにあまり注目されていないのでしょうか。
これは「マーケティング」の違いにあると言えます。スピードラーニングは営利なのでTVコマーシャルを多用しており、普段から目に(耳に)付きます。一方NHKは非営利なので積極的に宣伝はしていませんね。
以上、スピードラーニングを含む自宅自習用の「有料」リスニング教材を検討している方は、是非無料のNHKの方も試してから決めて頂きたいと存じます。スピードラーニングも悪くはありませんが・・・財布が痛みます。
なお以下附則で実際にNHKニュースをどう使ったら効果的か、記しておきます。
おまけ:NHKニュースの勉強法
毎日3分程度の平易な英文ニュースがポストされます。

ラジオか、らじるらじるで音声を聞きましょう。
記事で下の方にスクロールすると親切にも英文が表示されています!

ボキャブラリーの解説、別タグで和訳もありますので、英文だけでは意味がはっきりしない方はまず内容を把握下さい。

- まず、英文を見ながら1度聞きます。
- 次にで英文を見ながらもう1度聞きます。
- 次にで英文を見ずにもう1度聞きます。
これを日々繰り返します。所要時間はほんの10分ほどです。
では、グッド・ラック!!
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