



アメリカで臨床を行うにはUSMLE (United State Medical Licensing Examination)に合格する必要があります。STEP 1, 2 clinical knowledge (CK), 2 clinical skill (CS)の3つの試験に合格するとECFMG certificateが発行されます。
多くのレジデンシーやフェローシップで、外国人がプログラムに入る場合はECFMG certificateが必要条件となっています。これらの試験の中で、英語が苦手な多くの日本人にとって、Step 2 CSは最難関となります。
しかし、英語力は一朝一夕にはのびませんが、Step2 CSは対策次第で何とかなります。もちろん並行して英語力の改善に精進することは大切ですが、今回はこのCS対策について説明していきたいと思います。
こんにちは。医師になり10年が過ぎました。長年の夢であった臨床留学を実現し、今アメリカで医療を行っています。こちらにきても英語は日々勉強であることを痛感しています。帰国子女でもなく、英語の勉強もそれほどして来なかったため、英語では大変苦労しました。苦労したからこそ、どのように克服していくか、みなさんの英語学習に役立つ情報を発信していけたら良いなと思っています。
目次
USMLE Step 2CSとは

USMLEで日本人が一番苦戦する試験がSTEP 2 CSです。STEP2 CSは模擬患者に対して面接、診察をして実際に今後のplanを説明し、患者の質問に答え、カルテを書く、という実技試験です。
アメリカで受験する必要があります。試験会場は、Philadelphia、Atlanta、Chicago、Los Angeles、Houstonの5カ所に設置されています。試験結果はスコア表示ではなく、合否判定のみとなります。
STEP2 CSでの評価項目は3項目あり、Communication and Interpersonal Skills (CIS)、 Spoken English Proficiency (SEP)、Integrated Clinical Encounter (ICE)から成りますが、1回の試験ですべての項目で合格ラインに達して初めてSTEP2CS合格となります。
この試験の厳しいところは一度でも落ちてしまうと、その後の医師としての人生に響いてしまうところです。2012年ころから採点基準が特にSEPで厳しくなり、日本人は結構落ちています。
逆に日本人はCISとICEでおちることはめったにありません。これらはむしろ高得点になりますが、SEPでおちます。いくらCISとICEが高得点でもSEPが基準を下回っていれば不合格となってしまうのがこの試験の恐ろしいところです。
十分な対策ののちに受験することをお勧めします。
テストの内容

12人の模擬患者(Standardized Patient)を面接、診察します。1人の患者役につき15分で問診、診察、方針(どのような疾患が考えられて、どのような検査をするか)を説明し、最後に患者からの質問に答えねばなりません。
この質問がchallenging questionといって、普通の「私は肺炎ですか?」といった質問もあれば、「おれは死ぬのか?」や「お金がないから治療を受けたくないんだけど?」といった難しい質問をしてくる患者もいます。
また急に怒り出したり、泣き出す患者もいて、その都度適切に対応する必要があります。
その後10分間でPatient Note(カルテ)を作成します。Patient Noteは聞くべき質問が聞けているのか、診察所見が適切にとれているか、鑑別疾患として何を考えたのかなど、幅広く評価されます。
申し込み方法
以下のUSMLEのwebsiteから簡単に申し込めます。この際に自分のUSMLE IDが必要となります。
テストの場所

上記のwebsiteから場所を選ぶことになりますが、下記のテストセンターがあります。これが意外と大事で、英語に自信がない人は必ずLAを選びましょう。日本人はほぼみなLAで受かっています。
日本人のアクセントが受け入れられやすいとか、いろいろな人種の人がいるから寛容だとか、いろいろな説がありますが、とにかく日本人の場合ほかの場所で受けて落ちて、LAでうけて受かった人がたくさんいます。英語に自信があればどこで受けてもよいと思います。
テストセンターの場所
- Atlanta, Georgia
- Chicago, Illinois
- Houston, Texas
- Los Angeles, California
- Philadelphia, Pennsylvania
Step 2CSの対策と勉強法

基本的には英語の総合力、つまりリスニング・スピーキングを向上させるトレーニングをしつつ、下記に紹介するCSに特化した対策をする必要があります。
合格に必要な総合的な英語力をつける
これは一朝一夕には大幅にアップすることはありませんが、CSないし、その先の臨床留学を考えた際に必ず必要になりますので、毎日30分はオンライン英会話をしつつ、リスニングの練習をしましょう。
別途の記事のオンライン英会話の有効な使い方、とヒアリングマラソンの有効な使い方、その他、本websiteには有用な記事がありますので参照してください。
» 24時間やり放題は罠!?ネイティブキャンプの効果的な使い方
» ヒアリングマラソン1,000時間達成!効果的な使い方を徹底検証
英語が苦手な日本人が合格するためのCS勉強法

いわゆるCSに特化した勉強法です。これは大きく3つあります。逆にこの3つしかありません。英語が苦手な日本人、帰国子女ではない日本人はみなこの方法をとっています。
ずばり、「フレーズ丸暗記」、「skypeでCSの先生とレッスン」、「パートナーを見つけて練習」です。それぞれについて解説します。
フレーズ丸暗記
われわれnon-nativeにとってアドリブでこのテストをのりきるのは良いアイデアではありません。私はアメリカに来て1年近くになりますが、それでもいろいろな場面でアドリブはきついです。
例えばapartmentで何か不具合や故障が起こった時も、担当の人に言うことをあらかじめきめてから電話します。
ましてこれは医学の試験で、先ほども書いた突拍子もない質問が来ることもあるので、覚えられるものはおぼえて、なるべくアドリブを少なくすることが大切です。アドリブになると必ず発音でぼろが出る⇒SEPの項目で減点⇒不合格、が日本人の不合格パターンです。
私よりももっと長くアメリカに住んでいる友人もいますが、みな英語にはある程度のストレスを抱えていきています。
私の友人で臨床留学している人たちも、早い人でもある程度病院で機能するためには半年かかっています。USMLEに受かっている人が現地にきて、毎日英語環境の中で働いてもそのくらいかかるのです。
日本にいながら、その場に応じたアドリブのきいた医療面接ができるレベルになることはかなり難しいといえるでしょう。
もちろん3-5年かける覚悟があればできるかもしれませんが、これはアメリカで臨床医となるためのテストであって、3年も5年もかけるものではありません。Phrase丸暗記が一番の近道です。ただし、どのphraseを丸暗記するかも非常に大切です。
下記でも紹介しますが、一番の参考書はFirst Aid for USMLE step2 CSです。これの中に各状況に応じたphraseが載っているので、まずはこれをやりましょう。
First Aid for the USMLE Step 2 CS
ただし、この本も100点の本ではありません。例えば定番の主訴をたずねるフレーズである「今日はどうしましたか?」と質問するのに4通りくらいの質問方法が載ってしまっています。4つもいりません。われわれ日本人にとっては1つで十分です。
要はうかればよいので、4つの中でどれが日本人的に発音しやすいのか、アメリカ人にとって聞き取りづらくないのか、を考える必要があります。また、実際に練習し始めると分かりますが、結構First Aidにのっていないphraseもあります。
なので、この辺に関しては有料にはなりますが、私はあとで紹介するCSの家庭教師をしている先生のレッスンで、質問集を購入しました。また、自分がどうしても発音しにくい質問は別の質問方法、phraseを先生に教えてもらっていました。
skypeでCSの先生とレッスン
2番目のSkypeでCSの先生とレッスン、は以下で紹介する先生とのレッスンです。
何をどう練習したらよいのか、どういう状況でどのphraseを使ったらよいのか、最初は全く分からないと思います。世の中に出回っているCSの対策本は日本人のために書かれた本ではありません。
そして、アメリカにくると分かりますが、日本における英語教育の影響で、われわれ日本人の英語力はきわめて低いですので、特別な対策が必要と思います。
また、われわれが発音が難しいL,Rがたくさん出てくるphrase集がたくさんあります。プロの先生だとこの辺を考慮して教えてくれますので、最初はレッスンを受けることをおすすめします。
パートナーを見つけて練習
3番目のパートナーを見つけて練習とはUSMLE forumをはじめ、同時期にCSをうける人がskypeでの練習パートナーを探しています。ここでパートナーを見つけましょう。
実際のテストでは診察をしなければならないので、理想的には日本で同時期にうける人でかつ近くに住んでいる人を探すのが理想ですが、これはなかなか難しいので、スカイプで問診だけ練習して、あとは家庭教師の先生に診察手技を教えてもらうか、友人や家族に診察させてもらうとよいです。
おすすめの教材とCS対策講師

絶対に必要な教材はFirst Aid for USMLE step2 CSです。ほかに手を出すとするとUSMLE world step2 CSです。ほかにもいろいろ教材はありますが、この2つで十分です。
First Aid for the USMLE Step 2 CS
USMLE World Step2 CS: https://www.uworld.com/step2cs/step2cs_home.aspx
一番大事なのは同じ教材でよいので正しい方向性で学習、練習することです。
私のおすすめは最初はマンツーマンの家庭教師(skype)と練習する、やりかたや方向性が分かってきたらUSMLE forumで同時期にテストを受ける仲間を探してskypeで練習することです。
CSの家庭教師をしている先生を2人紹介します。両方とも私が使った先生なので質は保証します。
1人はインド人でDr Pumaという人です。下記のwebsiteから連絡が取れます。
相当授業料は高いですが、私は彼のコースを何回か受講したおかげで実力が付きました。おすすめです。彼のCS合格のためのapproachはかなり日本人向けでよいと思います。
もう1人は日本人でCSのcoachをしているDr Ichiという先生で
japanesecscoach@gmail.com
で連絡がとれます。彼から購入した「日本人のためのCS phrase集」、は秀逸で、私は今でも使用しています。勉強方法の相談、skypeでのCSレッスンも行っており、私は初期は英語が本当にだめだったのでこちらの先生とすすめました。
わからなければ日本語で聞けるのと、インド人の英語はアメリカ人以上に聞き取りが難しいので、こちらの先生もおすすめです。
スケジュールの立て方

英語に自信がない人は最低半年から1年はみましょう。練習しまくって条件反射的に覚えたphraseがでるようにしましょう。、
受験(渡米)までに必要な期間
最低半年は必要です。私は1年3か月かけました。途中さぼった時期があると考えても1年はかけました。1回でも落ちると、その後のキャリアに不利になるからです。私の考えとしては
- First Aid一読、自分のphrase集をつくるもしくは買ったものを覚える(1か月)
- 家庭教師の先生と1日1時間、1か月程度練習(1か月)
- 練習相手を見つけてSkypeで練習しつつ、家庭教師との先生の練習もつづける(3か月)
- 練習相手をもう1人見つけて最低2人と練習しまくる(1か月)
が6か月プランです。期間を伸ばす場合は3と4をのばしましょう。
渡米後のスケジュールの立て方
渡米後はKaplanの5日間CS対策講習に出ましょう。そのままCSを受けます。典型的なスケジュールは、以下の通りです。
- 月~金曜日 Kaplan講習
- 土曜日 受験会場の近くのホテルに移動、Kaplanで知り合った友達とface to faceで練習
- 日曜日もしくはそれ以降に受験
大事なのはKaplan講習と受験日をしっかり近くにorganizeすることです。Kaplanを1週間とることは1週間である程度英語環境に慣れることと、1週間の期間が時差ボケ解消に有効であることです。
また、私はスカイプで一緒に練習していたロシア人と試験日を近くすることで、Kaplan講習の後の土曜日、日曜日は同じホテルに泊まり、練習しあいました。
これは実際に診察しあうことができるのでかなりおすすめです。
まとめ
CSは一度落ちると自分のキャリアを致命的にしかねません。また、再受験には10万円以上の受験料はもちろん、航空券、ホテルの莫大なお金がかかります。
十分な対策をしたうえで受験し、1度で受かりましょう。
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