



留学といっても、色々な方法がありますし、大学・大学院も様々なので、どのように選んだらよいか、悩むことがあるかもしれません。
世界中に、数ある大学・大学院の中で、自分にぴったりの大学院を探すのは、なかなか容易なことではありません。
大学・大学院を選ぶ際には、以下のことが主な判断基準になるでしょう。
- コースの内容
- 自分が指導を受けたい教授がいるか
- 求められる英語のレベル
- その他必要な条件(他科目のテストスコア、社会人経験など)
- 地域・国・場所
- 英語圏または非英語圏か
- 学費
- 生活費
- コース終了までにかかる年数
今回は、私の体験をもとに、
- どうして大学院に留学しようと思ったのか、
- どのように大学院を選んだのかを、
- なぜセサックス大学に進学したのか
ご参考までにご紹介します。
この記事の著者:是永美夏子(これながみかこ)
慶應義塾大学卒。英国大学院卒。元国連教育科学文化機構勤務。国際協力×教育×英語を柱に、グローバル教育を推進している。海外在住歴10年。話せる言語は、英語、アラビア語、ドイツ語、他。
目次
どこの大学院に行く?

大学院に留学しようと思ったきっかけ
みなさんはなぜ大学院への留学をお考えですか?大学学部から直接大学院へ行く人もいれば、社会人経験を経てから行く人も多いですね。
社会人を経て大学院留学を考えるケースは、働いている間にたまった「問題意識」を解決・アカデミックに探求したい方が多いと思います。
私の場合もそうでした。私は、大学を卒業してから、銀行に勤務していましたが、その間も、大学時代からの疑問
- 「世界の貧しい子どもたちは、どうしたら救えるのか?」
- 「世界経済の南北問題は、解決する方法はないのか?」
が消えず、銀行を退職し青年海外協力隊としてエジプトに赴任しました。そこで、ストリートチルドレンへの教育という活動を行う中で、
「この社会は理不尽だ。社会から取り残された子どもたちは、どのようにしたら救えるのか?」
というモヤモヤが膨らみ、大学院でアカデミックにじっくり研究して、勉強してみたいという思いが強くなりました。
なぜサセックス大学を選んだのか?大学院の選び方
途上国のこうした問題は、通常「開発学」という切り口になりますが、私は、このような子どもたちでも、現実的に社会に復帰できる「方法」を探したくて、「教育学」という切り口も求めました。
大学院をどのように選んだかいうと、下記の流れです。
- 「開発学」という切り口で、コースが充実しているのはイギリスまたはアメリカ。
- アメリカは、修士が2年。VS イギリスは修士1年。
- ライフプランと学費の観点から、1年間のイギリスに決定。
- イギリスの中で、学びたいコースがあるところは3つの学校。
- そのうちサセックス大学から合格をいただいた。
自分が希望しても、英語の点数や、アプリケーションの内容、過去の経歴などで、必ずしも合格するとは限りません。
国内の大学受験と同じですね。もちろん、志望校を1校決めて、出願することもできますし、複数、出願することもできますね。
複数校の受験準備をするのは大変でしたが、何年も浪人するのが嫌だったので、一度に複数校を受けました。
どうしても、大学院で研究したいものがあるのであれば、レベルの異なる大学院を複数校受けて、すべり止めをつくっておくのも、一つのやり方ですね。

キャンパスの見える丘で
サセックス大学大学院とは?
次に、サセックス大学大学院についてご紹介します。

サセックス大学大学院の紹介
サセックス大学大学院は、イギリス南部サセックス州のブライトン近郊の小高い丘の上にある総合大学です。
今までに5人のノーベル賞受賞を輩出し、リサーチ力、就職力が高く、世界各国から集まる留学生にも人気の大学です。
サセックス大学基本情報
創立 | 1961年 |
場所 | サセックス州、ブライトン |
ランキング | 19位 *¹ |
リサーチ力 | 1位&2位 |
就業力ランキング | 4位 |
留学生満足度 | 93% |
有名な専攻分野 | 開発学・メディア&フィルム・美術 |
学費(外国人留学生) | £16,750-19,200 |
入学の難易度 | Cランク*³ (MARCH上位) |
出典)サセックス大学HP
- *¹ Times Higher Education Ranking 2020
- *² Research Framework Excellence Guide 2014
- *³ https://ukunijohox.hatenablog.com/entry/2020/06/20/222506
サセックス大学は、ダイバーシティのある国際色豊かな大学・大学院です。
- 120か国以上からなる留学生(20%以上が留学生)
- 50か国以上からなる教授陣、
私が所属したコースも、20数名中、イギリス人はほとんどおらず、大多数が世界中からの留学生でした。
サセックス大学は、以下のように留学生にとっても勉強しやすい環境が用意されています。
- 図書館は24時間空いている。
- 留学生への寮の用意がしっかりされている。
- キャンパス内に、カフェテリア、スーパーマーケットがある。
- 子連れで留学しても、キャンパス内に託児所がある。
- 留学生の数が多く、分かり合える仲間が多い。
- 留学生向けの歓迎会がある!
国際協力・開発分野が強い!サセックス
サセックス大学は、世界有数の開発学研究機関です。主な特徴は以下の通りです。
- 科目別世界ランキングでは1位*⁴
- イギリス国内トップの開発学専門家の存在
- ヨーロッパで最大規模の開発学図書館
*⁴英大学評価機関クアクアレリ・シモンズ(2017)
40年の歴史のある開発学専門機関(Institute of Development Studies)には、世界的に有名なロバート・チェンバース元教授もいらっしゃいます。
サセックス大学・大学院のでは、貧困と紛争、環境、ジェンダー、教育など様々な切り口で開発学を研究できます。因みに私は、「開発X教育」を専門としていきたかったので、MA in International Educationのコースを選びました。
サセックス大学・大学院の開発関連の多くのコースでは、社会人経験が求められることが多いです。英語に関しては、IELTS6.5-7.0が求められる条件になります。

国際色豊かなクラスメイトたち
大学院に入学してから卒業するまで
では、実際に、どのように出願するのか、その後、入学してからの生活はどのようなものなのかを、ご紹介していきます。

入学までの流れ(出願プロセス)
出願までの流れは、他の大学・大学院とあまり変わらないと思いますが、基本的に以下の流れになります。
- 願書請求(ダウンロード)
- 出願書類の作成
- 出願窓口に出願
- 入学許可
- 入学意思表明(デポジット発生)
- 寮の手続き
- 出国
私はエジプトで青年海外協力隊として働いている時に、現地のBritish Councilに通いIELTS対策をしました。
仕事をしながら留学準備を進めていくのは、もちろん容易なことではなく、バタバタしているうちに奨学金の申し込みの時期を逃してしまい、全額自費となり苦労しました。
私の経験からの教訓をいくつかご紹介します。
① 奨学金は大学院選びと同時にチェックすること!
奨学金の応募時期は団体によって、とても早いところもあります。合格を待ってからというのではなく、願書を取り寄せる前に一度調べておきましょう。
② 英語試験対策は留学手続きを始める前から余裕をもって始めること。
IELTSやTOEFLはそれぞれ特有の試験の傾向があり、それにむけた対策をしっかりすればするほど点数が取りやすくなります。
一度に希望の点数が取れるかわからないことから、複数回受けることもできるように計画すると安心ですね。

③ 出願のために推薦状が必要となることが多く、予め頼める方を探しておく。
複数の大学を受験するのであれば、推薦状も複数必要になります。また、一つの大学でも2通以上など条件が異なります。
大学生活を送りながら、社会人として勤務しながら、推薦状を書いていただけるならどなたにお願いできそうか考えておきましょう。
予め、留学を考えていることを伝えておくと先方も推薦状にサインがしやすいと思います。
④ 推薦状は十分な期間をもってお願いすること。
もし、複数校および奨学金の分などをお願いする場合は、予め情報を整理し、相手のスケジュールも考えたうえで余裕をもってお願いしましょう。
⑤ 留学資金の目途を立てておくこと。
留学は、現実的にはとても高額の費用がかかります。学生・社会人の間から費用をためておくといいですね。
サセックス大学大学院の学費

留学資金は、サセックス大学大学院の場合は、目安として以下のように必要になると思います。
「一年間の留学資金の目安(サセックス大学大学院の場合)」
学費 | 250万円~300万円 | |
生活費 | 家賃 | 200万円 |
その他生活費 | ||
大学院英語準備対策 | 20万円~50万円(期間により異なります) | |
合計 | 500万円~550万円 |
留学生として行くので、多くの場合、入学前の1か月~のプリセッショナルという英語のコースを受講することになります。それなりに費用がかかりますが、私の場合は参加してよかったです。
いきなり入学して、エッセイ課題などに取り組むよりはこれから一緒にキャンパス生活を送る仲間と共に、図書館の使い方などに慣れながらの準備期間をもてたことでスムーズなスタートをきることができました。

論文の一例
大学院生活
イギリスの大学院は1年間で2期生です。9‐10月頃秋に始まり翌年の夏に修士論文を提出します。
「1年間で短く、修士が取得できる!」という利点は、言い換えれば「1年間で、ものすごい集中して、修士をとる!」ということです。
よって、当然のごとく、私の1年間は食べてる時間以外はほとんど勉強していました。典型的な私の一日をグラフにすると図のようになります。
もちろん、たまには友人とご飯を食べたり、買い物に行ったりすることもありました。

留学中の基本的な生活パターン
寮が大学のキャンパス内にあり図書館も24時間空いているのが大変便利で助かりました。
キャンパス内に住んでいると、他の留学生も夜中まで自室や図書館で勉強している様子が感じられるのでとても心強かったです。
キャンパス内にはカフェテリアや小さなスーパーマーケットもあったので、食事にかける時間は短くできました。
1週間に1度ほど、バスに乗って海辺のブライトンの街までスーパーマーケットに買い出しに行くのがとても楽しい気分転換でした。
また、キャンパスの周りにはなだらかな丘陵地帯がずっと広がっていて、牛が放牧しているのが部屋の窓から見えました。
寮のまわりの木々にリスたちが遊びに来ていたり、キャンパス内を大きな海カモメが散歩していたりと、豊かな自然に囲まれた環境だったこともうまくリラックスしながら過ごせた理由かもしれません。

キャンパスの隣の丘では牛の放牧



その後のキャリア

卒業後の進路
サセックス大学・大学院で、開発関連の研究をした学生たちの多くは以下のようなキャリアに進んでいます。
- 国際機関
- 自国の省庁
- NGO
- 教育機関、大学
また、国際機関で活躍する代表的な卒業生としては、
- Rebeca Grysnspan、元国連の事務総長
- 高瀬 千賀子氏、国連地域開発センターの所長
がいらっしゃいます。
アメリカの大学院の修士は2年間なので、長期休暇などにインターンなどをして、その後の就職先につなげていくということがやりやすいと思います。
しかし、イギリスの大学院の場合は1年間しかないので、その間に「卒業後、何をしたいのか?」を考える必要があります。
「イギリスの大学院は1年で短く終わってよい!」ということは、「その1年以内に、次の就職先・進学先のことを考え、準備しなければならない!」ということにもなるのです。
就活のコツ

卒業後に就職を考えているのであれば、留学中にできることとしては、
- 求人情報を探す。
- OBに話を聞く。
- CV(履歴書)を送る。
- 関連するイベントに参加する。
というものがあるかと思います。それぞれ見ていきましょう。
①求人情報を探す。
特に国際的な仕事の場合、求人情報は基本的は各組織のHPなどを見て探す必要があります。
②OBに話を聞く。
国際的な仕事の場合、その組織で実際に働かれたことがあるOB(先輩)に話を聞くのはおススメです。
HPだけではわからない、実際の仕事内容や仕事環境、その後のキャリアなどを聞くことで、本当に自分がやりたいことと合っているか見極めることができます。
開発関係のコースには、様々な組織を経験してきたクラスメイトや博士課程で研究している先輩たちがいます。まずは身近なところでOBを探したり、類似業務を経験された先輩を探してみましょう。
③CV(履歴書)を送る。
希望する組織にはCVを送りましょう。特に、国際機関に提出するものは英文履歴書になりカバーレターなどもいるので研究と工夫が必要です。
④関連するイベントに参加する。
- 希望業種の人の集まり
- 交流会
- 学会
- 国際会議など
自分が希望する業務や組織のイベントにはできるだけ参加しましょう。
色々な現実的な話が聞けたり顔や名前を覚えてもらうことで、今後の就職につながりやすくなります。海外での就職は意外とコネでつながるケースも多いのが事実です。
全く知らない外国人より、顔見知りで人となりが知れた外国人の方が就職や進学につながっている機会が高くなるというケースをたくさん見てきました。
クオリティの高い英文履歴書を作成するのも大事なのですが、相手にとって存在感を出しておくことも大事なのです。
私の場合
私の場合も、修士コースが始まって慣れてきたと同時に就職活動を始めていました。「開発と教育」というテーマで研究しているので、卒業後もその分野で研究をいかした仕事をしたいと考えていました。
UNESCO、UNICEF、JICAなどの求人を探しはじめ、条件が合うものからCVを送り始めていました。修士コースといっても、最後に大きな修士論文がありますが、それまでは、関連する別のテーマの論文を幾つか書くことになります。
なので、日々のやることとしては、
- 授業のリーディング
- 授業での発表の準備
- エッセイを書くための文献探し
- エッセイ執筆
- プルーフリーディング(英文添削)の依頼・修正
- 就職活動
と色々ある中での就職活動になります。
まだ研究実績がない状態での活動になるので、難しい部分がありますが①今研究していることや②修士コースでやりとげたいテーマを強調して応募していきました。
いくつか応募している中でUNESCOから声がかかったのですが、面白いエピソードをご紹介します。
①共通の知り合い
後に上司となるエジプト人からの電話面接でした。その上司とは直接面識がありません。一通り志望動機などを話していきます。上司もそこまではたんたんと話している感じでした。
話の流れから、私が以前エジプトで働いていた時の上司が、UNESCOの上司と共通の知り合いだということがわかりました。
そこから、「あー、彼女と働いていたのね!!」ということで、信頼感が増し、話がグッと進んだのです。
②エジプトでの国際会議の参加
しかし、電話面接だけでは、まだ選考途中であることは変わらず、「そんなにやりたい気持ちがあるのなら、5月にエジプトで行われる国際会議に参加してみないか?」というものでした。
私の研究テーマもエジプトでのものだったので、5月にエジプトに飛び、上司との面接とデータ収集を同時に行ってくることができました。
その結果、UNESCOで国連ボランティアという職種で、まさに研究しているテーマの仕事内容のオファーが来ました。
「ストリートチルドレンや働く子どもたちへの学校事業」を中心としたポストで、8月に修士論文を提出し、一度日本に帰国して10月からエジプトで仕事をスタートしました。

UNESCOの担当プロジェクトサイトにて
留学を目指すみなさんへ

留学のススメ
留学を振り返って思うことは「頑張って、留学してよかった!」ということです。留学して、よかったことをまとめてみました。
- グローバルな環境に身をおけたこと。
- やりたい学問が思い切りできた環境だったこと。
- 英語での授業、研究、執筆は大変だけれども、やり抜く力が身についたこと。
- 英語で、自分のやりたい研究を深められたこと。
- それはやはり、その後の自分が目指すキャリアにとって必要だったこと。
- 必要なだけでなく、留学経験のおかげで、キャリアの選択肢が増えたこと。
- 自分への自信がUPしたこと。
留学するには膨大な努力と費用がかかりますが、それは人生にとっての大きな有意義な投資となったのは間違えなかったと言えます。



最後に
留学は容易なものではありません。でも、どうしても海外の大学・大学院で学びたいものがあるのであれば、その情熱を糧に、頑張り、やり遂げることができると思います。
みなさんの気持ちが強ければ強いほど、その希望は実現します!ご自身のやりたいことを見極め、留学という切符を手にし探求できることを応援しています。




