本稿では、良いレジュメの作り方についてご解説したいと思います。
海外MBAプログラムに出願する際の必須提出書類の一つに「レジュメ」があります。これは主に重要な選考要件の一つである職務経験を確認する目的です。
また、MBA卒業後に再就職する際やはり履歴書が必須となりますので、この点でもうまい作り方を身に付けておいて損ではないでしょう。
この記事の著者: Tempest
- 横浜在住、40歳台前半の男性
- 米国のMBAを取得、専攻は金融
- 投資銀行マン等を経て、財務・法務系の翻訳家として独立(言語は英語・タイ語)
- Tempestの英語学習の記録
目次
良い履歴書とは?

シェークスピアが、「Brevity is the soul of wit. / 簡潔は機知の精髄」と言っていますが、履歴書がまさにコレです。
例えば、外資の超一流企業の人事担当者が、中途採用の応募者をまず書類選考する場合を考えてみて下さい。
待遇の良いポジションですと、一つの空きに対しあっという間に何十・何百と応募者が殺到することは想像に難くありません。
他にも多忙な中、無数のレジュメをいちいち精読するでしょうか? 恐らくざっと目を通して「目に留まったもの」だけを検証するというのが普通かと思います。
1枚に割く時間は10秒ほど、という話も聞いたことがあります。それで良さそうなものだけ抜き出し、各々じっくり読んでみるという感じです。
MBAの審査過程の場合、審査料を受け取っているためとフェアにするため全てにある程度時間を割くと思いますが、やはり応募者の数が多いと目に付くものを優先して検討することになるかと思います。
このため、「パッ」と見ていいな・詳しく読んでみたいな(当人の論文含め)と思わせる、簡潔だが印象的なCVを作ることが大切になります。
日本の「例の」フォーマットが決まっている履歴書と比べると、英米はフリーフォーマットで、どう作るかは作成者に任されています。
このため工夫・裁量の余地が大きく、作り方によってかなり差が出ます。
良いCVの5つのポイント

とにかく簡潔に
自分のして来たこと全てを書く必要はありませんので、アピールしたい点だけを書きます。
逆に書きたくないことは省いて構いません。情報を整理する能力も見られていると思います。
具体的・定量的に
どんな功績を挙げた等、なるべく具体的に表現します。特に英米は数字が好きなので、売上を何ドル増加、コストを何ドル削減、など定量的にした方がベターです。
また、「マネージメント」経験を重んじるため、何人部下を統括した、などの数字が入ると嬉しいです。
MBAに応募する時点で管理職になっている人は少ないと思われますが、別にリーダー格でチームを率いた、でも構いません。
レター / A4 1枚だけ
英米でも別に1枚とは限られておらず、見出しを「履歴書」とし、職務経験の詳細を「職務経歴書」として別添で数枚書くケース等もあります。
が、職務経験や業績を含め全部1枚にまとめるのがベストとされています。
担当者もあまり多いと読む気が起こりません。詳細は面接の際口頭で説明すればよく、MBAでも国際電話面接があることもありますね。
逆時系列で書く
日本の履歴書は時系列が普通ですが、特に実務経験を重んじるMBAや就職活動の場合、直近から遡って書きます。このため、学歴→職歴ではなく職歴→学歴とします。
関係ないことは書かない
日本の履歴書には「趣味・特技」などという欄がありますが、ビジネスに関係ないことは一切書かない方が賢明です。
例えば資格についても「簿記検定」はOKですが「自動車免許」は要りません。連絡先以外、生年月日等の個人情報すら載せません。
ちなみに、年齢や性別などの個人情報を入れない、というのは簡潔を貴ぶということ以外に、審査に当たって先入観・差別が無いように、というフェアを重んじる英米の考えを反映しているとも言われています。
別に調べりゃ分かるのですが、目の前の書面に載っているかどうかで印象は違う、ということでしょうか。
英文レジュメの具体例
IT企業で営業の実務経験があり、MBAに応募しようとしている架空の男性で実例を示してみたいと思います。
対比のためにまず日本の履歴書を見て頂き、それを簡素な英米風のレジュメにしたらどうなるか、やってみます。
日本語の履歴書サンプル

英文レジュメサンプル

英文レジュメ(参考翻訳)
さて、日本語と英語の履歴書は同じ人物に関するものですが・・・印象が明らかに違います。日本語の方を見ても、「ふ~ん。何かどっかで知ってる人かしらん?」ぐらいにしか思いませんが、英語の方では:
- 優秀なセールスマンですでに駆け出しの管理職だと、数字でバンと言っている。数字が何よりモノを語るのでグダグダ言わない。一社目は冴えない事務だったのであまり語らない。
- 学歴も、単に学部名だけでなく、MBAに「大いに関係ある」ことを学んでおり成績も抜群だったと言っている。
- 経営学部で専攻は財務系だったが、かなりコンピューターにも強く、それでIT会社へ入った・内容的に強い金融業界を今担当している。このようにキャリアに連鎖があり、幅もかなり広いと分かる。
- 資格・技能・その他の業績についてもビジネスに関連していることのみを列挙している。
となり、一瞬見た審査担当官も興味が湧くはずです。
卒業後もMBAを学歴の所にガンと加えて(大学より先に書きます!)そのまま使えます。この人は企業派遣のようですが・・・卒業後転職することも視野に入れているかもしれません。
英文レジュメの書き方の5つのコツ

その他、フォーマットや表現で細かいコツを挙げておきます。
フォーマット
フォーマットについてですが、芸術ではないので余計なフリル(飾り)は入れずなるべくシンプルにします。
字体についても、フォントを変える(×)、大きさを変える(△)、ボールドにする(△)、下線を入れる(△)、イタリックにする(×)ということはどうしても強調したい場合を除き極力避けます。特にイタリックは見にくくなるので避けるようにして下さい。
インデックスもあまり気を使う必要はありません。
箇条書き
箇条書きにする場合、体言なら体言、用言なら用言で統一して並べます。これはレジュメ以外にも英文で何か書く際の鉄則です。
例えば、ある製品のモットーで「3S」というものがあったとします: Simple, Soft, Safety。シンプル・ソフト・セーフティですが、これはどうでしょうか? 分かりますが、あまりよろしくありません。
用言(形容詞)で並べるなら、Simple, Soft, Safeで、体言(名詞)で並べるなら、Simplicity, Softness, Safetyです(いずれかですが、簡潔なので前者がベター)。
上記の例で、スキルの項を見てみます。
- Language: Japanese (native), English (advanced), Chinese (intermediate)
- Computer language: JAVA, C+, Basic (highly skilled)
とあり、これは体言を並べているタイプです。これを、
- Can speak 3 languages, namely, Japanese (native), English (advanced), Chinese (intermediate)
- Computer language: JAVA, C+, Basic (highly skilled)
としたらどうでしょうか? 最初のが文章系で、次のが体言なのでちぐはずです。
- Can speak 3 languages, namely, Japanese (native), English (advanced), Chinese (intermediate)
- Can use 3 computer languages, namely, JAVA, C+, Basic (highly skilled)
ならまだOKですが、簡潔さでやはり例にある通りのが良いでしょう。
主語(S)の省略
「私」「一人称」と分かっているため、より簡潔にするためこうします。
例の職歴のところを見てもらうと”I”が全て省かれており、実績なので基本”Contributed”と過去形のVから始まっています。現在のマネージメント人数を示している部分は”Manage”と現在形から始まっています。
他動詞
他動詞(目的語を直接トル)を多用した方が英語っぽく・簡潔に・俺がやった感が出ます。
本稿の例ですと、
“boosting the section’s sales by $XX”
“the section’s sales went up by $XX because I…”
この二つを比べてみます。
「同課の売上を$XX俺がブースト / 底上げしてやった」
「同課の売上は$XX上がりました。これは実は私が・・・したためで、、」
上の方が何となく迫力があるとは思いませんでしょうか・・・。
英語のリソースを活用
ここで基本的なポイントを紹介していますが、より多くの情報を得たい方には、英語で情報収拾することをお勧めします。
例えば、Indeed.comの6 Universal Rules for Resume Writingは一読する価値があります。
あるいは、Linkedinで外国人のレジュメ(自分の業界のトップ企業に所属しているリーダー等のレジュメ)がどのように書かれているのか研究してみるのも良いと思います。
まとめ

再掲になりますが、良い履歴書とは:
- とにかく簡潔に
- 具体的・定量的に
- レター / A4 1枚だけ
- 逆時系列で書く
- 関係ないことは書かない
このように必要なことのみ書く方がインパクトは格段に強くなります。
なお、就職活動の際は学歴以下をもっと削って(ゼミやその他の業績は要りません)、職歴を厚くして下さい。MBAは半分アカデミックなので半々ですが、2:1ぐらいにします(職歴以外は純粋に事実のみ)。
さて、同じように書かれた自分のレジュメを少しアップデートして(MBA後でサラリーマンを辞めた後なので「自分史」みたいな感じです)見てみました。
フォーマットは簡潔なのですが、全然インパクトがありません。書き方もあるがまずコンテンツやな、と一方で思いました(泣)。






こんにちは。
現在来年のMBA留学(私費)を目指してエッセイやインタビューの準備を進めています。
年末にかけて出願準備の追い込み期間という事もあり、一足早く会社を退職して準備をしようかと考えております。
留学前にキャリアを中断させてしまうことは、MBA受験に際してレジュメやインタビュー等でマイナスに影響すると考えたほうが良いでしょうか?
こんばんは!コメントありがとう。難しい、そして良い質問だね。
その質問に対して、一つの正解はないと思う。
99%の人は仕事を辞めることをマイナスだからやめろと言うよね。
志望校にもよるけど、TOEFLやGMATで高得点があり、その上で仕事を辞める必要性も含めて自分のストーリーを作り込めば、MBA受験自体でマイナスに働くことは無いと考えている。
リスクとしては、仕事をやめてコミットしたけどデッドラインまでに理想的なスコアが取れないこと。
その場合、受かった学校に行く覚悟(再来年まで待つことはもうできない)さえできていれば、最後に決断するのはtttaで、その決意を私は応援するよ。
リスクを取るのも、自分の人生に責任を追うのも自分、自分の選択を正解・失敗にするのも自分なので、どんな選択をしても自信を持って頑張ってほしい。