




「推薦状は上司にお任せするもの」という固定観念は捨ててください。
MBA受験において、推薦状は「自分でコントロールし、演出するもの」です。
この記事では、MBA留学を目指す日本人が直面する「推薦状の壁」を突破するための、現実的な「ドラフト作成術」と「上司への依頼戦略」を解説します。
単なる自画自賛で終わらせず、審査官が「この学生を合格させるべきだ」と確信するロジックを、どう推薦状に込めるのか。その具体的な手順を見ていきましょう。
推薦状の一般的な構成、提出手順、基本的なマナーなどを知りたい方は、まず以下の記事をご覧ください。
- 💡 結論:推薦状の「下書き(ドラフト)」は自分で書くのが基本
- 多忙で英語に不慣れな日本企業の上司に「丸投げ」するのは事故の元。自分でドラフトを作成し、上司にファクトチェック(事実確認)と提出をお願いするのが合格者の常識です。
- ⚠️ 「ただ褒めるだけ」の推薦状は即不合格:
- MBAに「完璧な人間」は不要です。強みだけでなく、あえて「課題(伸びしろ)」を書くことで、「だからMBAが必要なんだ」という志望動機(エッセイ)の裏付けになります。
- 🏆 合格する構成の黄金比は「強み7:課題3」:
- 抽象的な形容詞(彼は優秀だ等)は捨ててください。STARメソッド(状況・課題・行動・結果)を使い、具体的な数字や他者との比較で「客観的な事実」としてアピールします。
- 🤝 上司を味方につける依頼のコツ:
- いきなりドラフトを渡すのではなく、事前に「私の強みと課題は何だと思いますか?」とヒアリングし、上司の言葉をドラフトに盛り込むことでスムーズに承認をもらえます。
具体的な例文と書き方は記事本編で徹底解説!👇
目次
なぜMBAの推薦状は「自作(Self-drafting)」が基本なのか
欧米のビジネススクール出願において、推薦状は「上司が書くもの」というのが建前です。
しかし、多くの日本人MBA受験生にとって、その建前を正直に守ることは、合格を遠ざける要因になりかねません。
なぜなら、日本と欧米では「推薦状文化」と「英語環境」が決定的に異なるからです。
日本人のリアルな出願事情:上司は「書き方」も「英語」も知らない
まず直視すべきは、日本企業における「推薦状」の現実です。
- 文化の壁: 日本には、部下を褒めて他社(他校)へ送り出すという習慣が一般的ではありません。そのため、上司は「そもそも何を書いていいか分からない」状態です。
- 言葉の壁: たとえ優秀なビジネスパーソンでも、アカデミックな英語でA4一枚分の推薦文を書き上げるスキルと時間を持つ上司は稀です。
この状況で、「先生(上司)にお任せします」と丸投げするのは無謀です。
「彼は真面目です」「リーダーシップを発揮しています」といった薄い内容(Generic Letter)で終わるか、最悪の場合、多忙を理由に後回しにされ、出願締切に間に合わないリスクすらあります。

「自作」はズルではない:合格者の常識「プロジェクトマネジメント」
では、合格者たちはどうしているのでしょうか。
答えはシンプルです。「自分でドラフト(下書き)を作成し、上司に内容を確認してもらい、提出してもらう」というプロセスを経ています。
「自分で自分を推薦するなんて、ズル(不正)ではないか?」「自画自賛で恥ずかしい」と感じるかもしれません。
しかし、MBA受験においては、このプロセスを「多忙な上司に対する最大のお膳立て(配慮)」と捉え直してください。
上司にとって、ゼロから文章を考える負担がなくなり、内容の事実確認(ファクトチェック)と提出だけで済むなら、これほどありがたいことはありません。
さらに言えば、これはあなたにとって「推薦状の内容を自分でコントロールできる最大のチャンス」でもあります。
推薦状作成を「上司への依頼業務」ではなく、自分が主導権を握る「プロジェクト」として捉え、積極的にドラフト作成に関与していきましょう。


「褒めるだけ」はNG!審査官を唸らせる「Gap分析」戦略
推薦状のドラフトを自作する際、多くの人が陥る罠があります。
それは、「とにかく自分を良く見せようとして、褒め言葉だけで埋め尽くしてしまうこと」です。
しかし、MBAのアドミッションにおいて、それは逆効果です。
完璧な人間はMBAにいらない
よくある失敗ドラフトの例を見てみましょう。
「彼は完璧なリーダーであり、業務上のミスもありません。性格も素晴らしく、これ以上指摘すべき欠点は見当たりません。」
一見、最高の推薦状に見えます。しかし、MBAは「完成された人間」が行く場所ではなく、「成長の余地(伸び代)がある人間」が、その隙間を埋めに行く場所です。
だからこそ、推薦状には「隙(スキ)」が必要です。
合格する構成の黄金比:「強み7:課題3」
では、どのような構成が評価されるのでしょうか。
おすすめは、「強み(Strengths)」を7割、「課題(Development Areas)」を3割という黄金比です。
- 強み(7割): 過去の実績・成長、リーダーシップ、チームへの貢献など、自信を持ってアピールできる事実。
- 課題(3割): まだ足りない視点、経験不足、若さゆえの視野の狭さなど。
ここで重要なのは、「課題」を「致命的な欠点(性格が悪い、遅刻が多い)」にするのではなく、「MBAで学ぶことで解決できる課題」に設定することです。
解決策:課題こそが「Why MBA」の証明になる
この「課題(3割)」を書くことには、明確な戦略的意図があります。それは、「Gap(現状と理想の差分)」を可視化することです。
推薦状の結び(Conclusion)で、以下のように締めくくってもらいます。
⭕️ 成功例(Gap分析の活用):
「彼は現場のリーダーとしては申し分ない実績を持っています。しかし、将来彼が役員を目指すにあたっては、より大局的な『経営戦略』やXXXXの視点を養う必要があります。だからこそ、その分野で世界的な評価を得ている貴校のMBAプログラムこそが、彼のキャリアにとって欠かせない次のステップなのです。」
このように、「彼には〇〇が足りない(Needs)」→「だから貴校のMBAが必要だ(Solution)」というロジックを組むことで、あなたの志望動機に説得力が生まれます。
戦略的意義:「第三者の視点」でエッセイを正当化する
あなたがエッセイ(SoP)で「私は経営戦略を学びたい」と主張し、上司が推薦状で「彼には経営戦略の視点が必要だ」と証言する。
この2つが一致したとき、審査官は「この学生がMBAを志望するのは、独りよがりな思いつきではなく、客観的に見ても妥当なキャリアステップなんだな」と確信します。
推薦状であえて「伸び代」に触れることは、あなたのエッセイの正当性を証明する高度なテクニックなのです。


推薦状の実例:ドラフト&完成版
では、実際にどのようなドラフトを作成すれば良いのでしょうか。
架空の事例(A氏)をもとに、「Gap分析」と「ストーリー」を盛り込んだ推薦状の日本語ドラフトと、その英訳例を紹介します。
【応募者 A氏のプロフィール】
- IT企業の法人営業担当(勤務5年)
- 新規開拓で課の売上5%増に貢献(強み)
- 将来はマーケティング専攻を希望(Gap)
① 日本語ドラフト(上司との合意形成用)
推薦者:B氏(A氏の直属の上司・課長)
この度本推薦状にて、A氏を貴MBAプログラムに推薦したく存じます。私はA氏の直の上司として5年務めたBで、推薦の資格があると思っております。
我が社Kは日本の大手IT会社であり、A氏は大学を卒業後私が統括している「法人営業1課」で製造業を中心に顧客の新規開拓に打ち込み、我が課の売上を5%、額にして年商X億円伸ばすことに貢献してくれました。A氏は顧客ニーズを的確に捉え、簡潔に資料に落とし込み、適切なシステムを提案することに長けているためです。人間的にも非常に誠実で、顧客からの評判も大変良いものがあります。
(▼ここからGap分析とWhy MBA)
A氏のキャリアを考えますと、上司としてはこのまま単なる一営業マンには留まってもらいたくなく、最終的には営業系の役員を目指してもらいたいと思っております。
そのためには、MBAプログラムでもっと客観的・大所高所のマーケティング・戦略眼を身に付け、卒業後はさらに大型の法人顧客を責任者として担当してもらいたいと考えています。
現状、ニーズをつかみ顧客に仕えるという点で機敏ながら、もっと根本的・潜在的なニーズを探り出すという力にやや欠けており、時に対症療法的なソリューションしか提案出来ていません。
このため、マーケティング・戦略諸般、特にリテール・法人含む顧客の購買動機・ニーズ発掘の研究・教授で世界に冠たる貴校のMBAプログラムはA氏にとってうってつけだと思っており、ここに推薦させて頂きます。
② 英語版(完成イメージ)
It is my pleasure to recommend Mr. A for admission to your MBA program.
I have directly supervised Mr. A for the past five years as the manager of Corporate Sales Section 1 at K Ltd., one of Japan’s leading IT corporations. During this time, I have observed his remarkable growth from a young sales professional into a strategic contributor to our division.
Mr. A has played a key role in expanding our corporate client base, particularly within the manufacturing sector. Through his proactive development of new accounts and disciplined relationship management, he contributed to approximately 5% growth in annual sales within our unit. His ability to accurately identify client pain points, translate them into structured proposals, and align our technical teams around feasible solutions has consistently set him apart.
What distinguishes Mr. A is not merely his execution capability, but his intellectual curiosity and desire to understand the broader strategic context behind business decisions. While he excels at responding to articulated client needs, he has increasingly demonstrated an ambition to move beyond tactical sales execution and contribute at a more strategic level — identifying latent market opportunities and shaping long-term growth initiatives.
I firmly believe that formal training in strategy and marketing through an MBA program will enable him to refine this broader perspective. With structured exposure to global case studies and analytical frameworks, he will be well positioned to transition from high-performing sales leader to future executive-level strategist.
Among the many professionals I have supervised in my career, Mr. A ranks within the top tier in terms of work ethic, adaptability, and leadership potential. I am confident he will both contribute meaningfully to your MBA community and fully leverage the program to accelerate his development.
I strongly recommend him without reservation.
Sincerely,
B
(Manager, Corporate Sales Section 1)
このように、「強み(営業実績)」を認めつつ、「課題(戦略的視点の不足)」を提示し、「だからMBAが必要だ」と結論づけることで、完璧なストーリーが出来上がります。


自作でも「客観性」を持たせるドラフト作成テクニック
自分でドラフトを書く際、最大の心理的ハードルとなるのが「自分で自分を褒めることへの羞恥心」です。
「私は優秀です」「私はチームの要です」と自分で書くのは、誰だって気恥ずかしいものです。
しかし、その恥ずかしさが原因で、「彼は真面目です」「彼は良い人です」といった当たり障りのない表現に逃げてしまうと、合格は遠のきます。
自画自賛(Subjective)に見せないコツは、形容詞を捨てて、「事実(Fact)」と「比較(Comparison)」で語ることです。
テクニック①:STARメソッドで具体化する
欧米の採用面接やMBAエッセイで鉄則とされる「STARメソッド」を、推薦状にも応用しましょう。
「彼は素晴らしい(He is excellent)」という抽象的な形容詞を使う代わりに、以下の4要素でエピソードを構成します。
- S (Situation): どのような状況で
- T (Task): どのような課題に直面し
- A (Action): どのような行動を取り
- R (Result): どのような結果を出したか
❌ 悪い例(抽象的):
「彼は非常に優秀な営業マンで、常に目標を達成し、チームに貢献しました。」
(↑これでは説得力がなく、自画自賛に見えます)
⭕️ 良い例(STARメソッド):
「製造業のクライアント開拓という困難な市場環境の中で(Situation)、
彼は課の売上を5%伸ばすという目標を掲げ(Task)、
顧客の潜在ニーズを掘り起こす独自の提案資料を作成し、粘り強く交渉しました(Action)。
その結果、前年比XXX%にあたる年商X億円の売上増を達成しました(Result)。」
このように、「優秀だ」という言葉を使わずに、具体的な数字や行動(Fact)を示すことで、読み手に「なるほど、優秀な人材だ」と判断させるのが正解です。
テクニック②:「比較級」で上司の視点を借りる
もう一つ、客観性を高める強力な武器が「比較(Comparison)」です。
ドラフトを書いているのはあなたですが、語り手(主語)はあくまで「上司」です。
上司が持つ「長いキャリア」と「多くの部下を見てきた経験」という視点を借りることで、評価に重みを持たせます。
【上司の視点を借りた表現例】
「私は過去15年間のマネジメント経験の中で、50名以上の部下を見てきました。その中でも、〇〇氏は間違いなくトップ5%(Top 5%)に入る優秀な人材です。」
単に「彼は能力が高い」と言うよりも、「過去の部下〇〇人と比較してトップクラスだ」と言い切ることで、評価の信頼性(Reliability)が格段に高まります。
この「相対評価」の視点は、謙虚な日本人が最も書き忘れるポイントですが、MBA合格のためには必須の要素です。


上司を味方につける「依頼と承認」のプロセス
ドラフト(下書き)の方向性が決まったら、いよいよ上司への依頼です。
ここで手順を間違えると、関係が悪化したり、協力が得られなくなったりするリスクがあります。
上司を「ただの提出役」ではなく、「MBA挑戦の応援団」に変えるための、スマートな依頼フローを実践しましょう。
タイミングと頼み方:出願直前はNG
まず鉄則として、出願直前(12月〜1月)の駆け込み依頼は絶対に避けましょう。
推薦状は、上司にとっては「優先順位の低い業務外の仕事」です。
理想は、出願の3ヶ月以上前から動き出すことです。
いきなり「推薦状をください」と切り出すのではなく、まずは「キャリアゴールの相談」という形でアポイントを取りましょう。
「将来は会社でこのような貢献をしたい。そのためにMBAで学びたい」という熱意を伝え、その流れで「つきましては、私のことをよく知る〇〇部長に、ぜひ推薦状をお願いしたいのです」と依頼すれば、断られる確率はぐっと下がります。
「インタビュー形式」で上司の言葉を引き出す
ここが最も重要なテクニックです。
承認をもらいやすくするために、いきなり自作のドラフトを突きつけるのはやめましょう。
その代わりに、「インタビューの時間」を設けます。
【上司へのヒアリング事項】
「推薦状の下書きを作成するにあたり、〇〇部長から見た私の評価をお聞かせ願えますか?」
- 私が貢献できたプロジェクトは何だと思われますか?(強みの確認)
- 今後、私が部長のような役職を目指す上で、何が足りないと思われますか?(課題の確認)
ここで上司から出てきた「キーワード(具体的な褒め言葉や、指摘事項)」をメモし、それをドラフトに盛り込みます。
そうすることで、後でドラフトを見せた時に、上司は「あぁ、これは確かに私が言ったことだ(自分の言葉だ)」と認識できるため、抵抗感なくOKにしてくれるようになります。
翻訳は「プロ」に任せるのが鉄則
ドラフトの内容が固まったら、英訳です。
ここでも上司に負担をかけないよう、以下のフローを徹底しましょう。
- 日本語で合意形成:まず日本語のドラフトを見せ、内容に嘘や誇張がないかチェックしてもらいます。日本語なら上司も数分で確認できます。
- 生成AIで翻訳:ChatGPTなどの生成AIを使って英語の叩き台を作るのは有効です。ただし、そのまま提出するのは危険です。AIの文章は文法的には正しくても、推薦者の人間味が抜け落ちやすいからです。
- プロによるレビュー・修正:最終的には、MBA出願に精通したプロや経験豊富な出願メンターにレビューしてもらい、「不自然な表現」「誇張」「抽象論」「AI臭さ」を取り除くことが重要です。
- 最終確認と提出:完成した英文ファイルを用意し、各大学から推薦者へ送られてきた推薦状提出リンクより、提出してもらいます。
「日本語で確認 → プロのレビュー・修正」という工程を挟むことで、「内容の正確性」と「英語の品質」の両方を担保できます。これが、品質と上司との関係維持の両面において、ベストな選択です。

まとめ:推薦状はエッセイの一部である
MBA受験において、推薦状は単独で存在する書類ではありません。
あなたの「CV(履歴書)」で経歴を証明し、「エッセイ」で志(こころざし)を語り、そのすべてが真実であることを第三者が保証する「証拠書類」。それが推薦状です。
最も重要なのは、これら全ての書類に「一貫性(Coherency)」があるかどうかです。
上司に丸投げしてしまっては、この一貫性は生まれません。
エッセイで「リーダーシップを発揮した」と書いたなら、推薦状でもその時の具体的なエピソードを補強してもらう必要があるからです。
だからこそ、「自作ドラフト(Self-drafting)」を恐れないでください。面倒な作業かもしれませんが、ここを乗り越えれば合格はすぐそこです。
上司を巻き込み、最強の布陣で出願に臨んでください!
海外大学院留学 攻略記事一覧











