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アメリカ大学へのスポーツ進学というと、早い時期から大学のコーチにスカウトされ、スポーツ奨学金を受けて進学する姿を想像するかもしれません。
Moonさんがアメリカ大学を目指し始めたのは、高校2年生の冬でした。北米の選手に比べると遅いスタートでした。
それでも、志望校のコーチへ自分のプレー動画を送り、アメリカでの大学訪問やアイスホッケーキャンプに参加。
競技を続けながらTOEFLやSAT、エッセイ、推薦状の準備も進め、約1年後にハーバード大学へ合格しました。
この記事では、Moonさんの経験を通して、スポーツを海外大学出願の強みに変える方法と、競技・英語・学校成績・奨学金を並行して準備する考え方を紹介します。

Moon
アメリカ
ハーバード大学
スポーツ留学
アイスホッケー
日本の民間財団奨学金
純ジャパ
| 出身高校 | 都内の国立高校 |
|---|---|
| 進学先 | Harvard University(ハーバード大学) |
| 専攻 | 科学史(History of Science) |
| 競技 | 女子アイスホッケー・NCAA Division I |
| 奨学金 | 日本の民間財団の給付型奨学金 |
| 卒業後 | ヨーロッパを拠点にプロアイスホッケー選手として活動 |
5歳でアイスホッケーを始め、高校時代にU18女子日本代表として世界選手権へ出場。高校2年生の冬からアメリカ大学進学の準備を始め、高校卒業後にハーバード大学へ進学しました。大学では科学史を専攻しながら女子アイスホッケー部でプレー。卒業後もヨーロッパで競技を続けています。
この記事の編集について
本記事は、MoonさんがThere is no Magic!!へ寄稿した2本の記事をもとに、編集部がインタビュー形式にして再編集したものです。一部、元の寄稿に含まれないエピソードは、Moonさんが自身のnoteとUJAへの寄稿を参照しました。ハーバード大学・アイビーリーグ・NCAAの制度情報は、2026年8月時点の公式情報をもとに「編集部補足」として加えています。
- 高2の冬に進学を決意し、コーチへの連絡と大学出願を同時に開始
- プレー動画、大学訪問、キャンプ参加を通して、自分から競技力を伝えた
- TOEFLは初回84点から約1年で104点まで伸ばした
- アイビーリーグにスポーツ奨学金はなく、日本の民間財団の奨学金を活用した
目次
U18日本代表落選から、ハーバード大学を目指すまで
5歳から続けてきたアイスホッケー

アイスホッケーを始めたのは5歳の時です。
地元のスケートリンクで、子どもたちがアイスホッケーをしている姿を見かけました。珍しいスポーツだったこともあり、「私もやってみたい」と思ったのがきっかけです。
小学校、中学校と地元で競技を続け、高校では都内の強豪女子クラブチームに所属しました。
日本代表やオリンピックを経験した選手が身近にいる環境で、私も自然と日本代表、そしてオリンピックを目指すようになりました。

高校1年生の冬、16歳でU18女子日本代表に選ばれ、アメリカで行われた世界選手権に出場しました。
初めての国際大会で大きな刺激を受け、翌年はもっと活躍したいと思って準備していました。ところが、次の世界選手権を前に代表メンバーから外れてしまったんです。
それまでは、努力を続ければ年代別代表からフル代表へ進み、いつかオリンピックに出られると思っていました。
その道が急に途切れたように感じ、「この先、どうすればいいんだろう」と本当に落ち込みました。
この経験を無駄にはしたくないという気持ちもありました。今までと同じ環境で同じことを続けるだけでは、思い描いていた場所へ届かないかもしれない。
そこで、競技を続ける環境そのものを変えることを考え始めました。
母が見つけた動画から「ハーバードへ行く」と決意

代表から外れて間もない頃、両親が海外という選択肢を提案してくれました。その時に母が見つけたのが、ハーバード大学女子アイスホッケー部の試合動画でした。
それまでの私にとって、ハーバード大学は「勉強ができる人が行く大学」というイメージでした。でも、動画に映っていた女子アイスホッケー部は、アメリカやカナダの代表経験者も所属する強豪チームだったんです。
私は学校の勉強とアイスホッケーの両方を続けてきました。
その2つをどちらも諦めず、さらに高いレベルで挑戦できる場所があると知り、直感的に「ここに行きたい」と思いました。
当時は、アメリカ大学の出願方法も、どれほど準備が必要なのかも分かっていませんでした。それでも、まずは目指してみようと決め、高校2年生の冬から調べ始めました。

実は、高校までずっと日本の学校に通っていて、留学にはほとんど関心がありませんでした。
高校で募集されていた短期留学や国際交流にも参加したことがなく、日本の大学へ進学するつもりでした。
留学への憧れよりも、アイスホッケーと学業を両立できる環境を探したことが海外大学進学の出発点です。
高2の冬から約1年で合格するまでの出願スケジュール
Moonさんは、コーチへの連絡、競技のアピール、英語試験、日本の大学受験を同時に進めました。実際のスケジュールは次の通りです。
| 時期 | 英語・大学出願 | アイスホッケー |
|---|---|---|
| 高2・12月 | アメリカ大学進学を決意し、志望校を調べ始める | コーチへプレー動画を送り、連絡を開始 |
| 高2・3月 | 初めてTOEFLを受験 | コーチとの連絡を継続 |
| 高3・春休み(4月) | 初めてSATを受験 | 大学訪問・コーチとの面談 |
| 高3・夏 | エッセイ・推薦状の準備 | 大学主催のアイスホッケーキャンプへ参加 |
| 高3・10月 | 早期出願で1校へ提出 | 競技・スコアの進捗をコーチへ報告 |
| 高3・12月~1月 | 最後のTOEFL・SAT、通常出願 | コーチとの連絡を継続 |
| 高3・2月 | 英語を活かせる日本の大学・学部も受験 | ― |
| 高3・3月末 | ハーバード大学に合格 | ―(入学後に女子アイスホッケー部へ) |
高2の冬から高3の春休みまでに、英語試験の初回受験とコーチへの連絡まで進めています。
準備期間が短い時ほど、「英語力が上がってから」「実績が増えてから」と待つより、現状を伝えて必要な条件を聞くことが重要だったことが分かります。
プレー動画を送り、コーチへ直接連絡

まず、興味のある大学のヘッドコーチへ、自分のプレー動画をメールで送りました。
最初は、どんな情報を送ればよいのかも、どのように英語でやり取りすればよいのかも分かりませんでした。
家族にも協力してもらいながら、競技歴や大会実績、学業成績、英語試験の状況を整理して連絡しました。
春休みには事前にアポイントを取り、実際にアメリカへ行きました。コーチと直接話し、チームの施設を案内してもらったことで、大学やチームの雰囲気も具体的に分かるようになりました。


高校3年生の夏休みには、大学が高校生向けに開催していたアイスホッケーキャンプへ参加しました。
コーチの前で実際にプレーを見てもらえたことで、チームへ参加する話がより具体的になりました。
映像だけでは伝わりにくい動きや、ほかの選手と一緒にプレーした時の様子を見てもらえる貴重な機会でした。
その後も、TOEFLやSATのスコアが上がった時はコーチへ報告しました。競技力に加えて、大学の授業についていくための学力や英語力も準備していることを継続して伝えるようにしていました。
リクルート枠が埋まっていても、別の道を探した

アイスホッケーでは、北米の有力選手が中学生から高校生の早い時期に大学と話を進めることがあります。
私が動き始めた時には、訪問した大学のコーチから、私の入学年とその翌年のリクルート枠はすでに埋まっていると伝えられました。
そこで、自力で大学に合格した場合にチームでプレーできる可能性があるかをコーチへ確認しました。
通常のリクルート時期には間に合わなくても、自分に残されている方法を聞き、競技と出願の両面から準備を続けました。
私がコーチと連絡を取り始めた時期は比較的遅く、この進め方がすべての選手にとって正解とは限りません。
競技、大学、入学年度、選手の実績によって進学の方法は変わるため、あくまで一つのケースとして参考にしてください。
編集部補足|コーチとの話と大学合格は分けて考える
ハーバード大学のアスリート候補者も、最終的にはAdmissions Officeの入学審査を受けます。合格は入学審査で決まるため、コーチとのやり取りと並行して、高校の成績、英語力、出願書類などを準備します。
また、大学・競技・入学年度によってリクルートの時期や手順は変わります。興味のあるチームが決まったら、大学チームの公式ページからコーチの連絡先とProspective Student-Athlete向けの案内に目を通しておきましょう。
競技と並行して進めた英語・成績・出願準備
TOEFL84点から104点まで伸ばした方法

高校2年生の3月に初めて受けたTOEFLは84点でした。初回は主にReadingとListeningで点数を取り、その後は試験対策に加えて、聞く・話す力を伸ばすことに力を入れました。
約1年弱、本場のスピードや発音に慣れる練習を続け、高校3年生の12月に104点を取得しました。

一番の土台になったのは、日本の中学校・高校で学んだ英語です。
TOEFLやSATでは、英語で長い文章を読み、内容を理解して答える力が必要になります。
学校で習う文法や単語が身についていたからこそ、試験形式や実践的なリスニング・スピーキングの対策へ進めました。
一つは、朝食時や隙間時間に海外の映画やドラマを流し、お気に入りの作品を繰り返し見ることです。
何度も見るうちに、とっさに口から出る「お決まりフレーズ」がいくつもできました。
もう一つは、TOEFLの音源を携帯に入れ、1.5倍速、1.75倍速と少しずつ速くして聞く方法です。
慣れたら音源に重ねて自分も話す練習を繰り返しました。速い音に慣れると元の速度がゆっくりに感じられ、この対策を始めてからSpeakingとListeningのスコアが大きく伸びました。
海外大学を目指し始めた時点で高いスコアがなくても、まず一度受験すると、現在地と伸ばすべき技能が分かります。
Moonさんの場合も、初回スコアがその後の約1年間の計画を立てる基準になりました。
課外活動は「数」より、続けてきた理由と学び

高校では3年間、スポーツ祭の準備委員会に所属し、一つの班の班長を務めましたが、組織全体のトップになったことは一度もありません。
自分の役割の中で先輩や後輩と協力して準備を進めた経験が、リーダーシップを伝える材料になりました。
高校3年生の夏休みには、近所の高齢者施設でボランティアをしました。
一見「ありがち」に見える活動でも、世代の異なる人との会話から得た学びや、自分のルーツと将来について考えたことを自分の言葉で伝えれば、出願書類につながる経験になります。
課外活動では、参加数や肩書きに加えて、何に関心を持ち、どのように動き、その経験から何を学んだのかが問われます。そこを自分の言葉で説明できることが大切だと感じました。
私の場合は、5歳から続けてきたアイスホッケーが一番大きな軸でした。長く続けてきた競技を、大学で何をしたいのか、どのような環境で成長したいのかという志望理由につなげました。
Common Appと推薦状を日本の高校で準備

私の高校は海外大学への進学例が少なく、出願手続きに慣れている先生もいませんでした。
アメリカ大学では、Common Appという共通出願システムを通して、学校の先生が成績証明書や推薦状などを提出します。
当時はその流れを知っている先生がいなかったため、高校3年生の夏休み前に自分で手順と締切を調べました。
私の場合、担任または校長・教頭から1通、教科担任から2通の推薦状が必要でした。
10月末の早期出願に間に合わせるため、夏休み前には3人の先生へ依頼し、これまでの活動、志望理由、大学で取り組みたいことを共有しました。
先生にお願いしたい書類や時期を説明し、提出時期が近づいたらリマインドしました。日本語で推薦状を書いてもらう場合は翻訳も必要になるため、早めに相談しておくと安心です。
大学調べでは、公式サイトの情報のほかに、大学の公式YouTubeでキャンパスを見たり、授業一覧や教授の研究分野を調べたりしました。
アイスホッケーチームの試合やSNSも追いかけ、自分がその大学で学び、競技を続ける姿を具体的に想像しました。
スポーツを強みにしても、奨学金は別に考える

ハーバード大学では、アイスホッケーの実績によるスポーツ奨学金は受けていません。
ハーバード大学を含むアイビーリーグ8校(※学部課程)には、スポーツや学業成績を理由に大学が支給する奨学金がありません。
大学からの経済支援は、基本的に家庭の経済状況に基づくニーズベースです。
私は合格後、日本の民間財団へ申請し、給付型奨学金を4年間受給しました。
つまり、私の場合は「スポーツを強みに大学とチームを目指す準備」と「留学費用を支える奨学金の準備」が別にありました。
競技を続けたいからといって、スポーツ奨学金だけに絞らず、大学の経済支援や日本の財団も含めて考えることが大切です。
Moonさんの場合|合格・競技・費用の関係
- 大学への合格:高校成績、英語試験、エッセイ、推薦状などを準備してハーバード大学へ出願
- チームへの参加:事前にコーチへ連絡し、動画・大学訪問・キャンプで競技力を伝えた
- 大学のスポーツ奨学金:アイビーリーグには制度がない
- 留学費用:合格後、日本の民間財団の給付型奨学金を活用


アイビーリーグの現行ルールは、Ivy League「Prospective Athlete Information」にまとめられています。
ほかの大学のスポーツ奨学金は、NCAAの奨学金案内と各大学の公式情報を照らし合わせてください。
アメリカ大学のニーズベース奨学金やメリットベース奨学金、日本の財団も含めた全体像は、アメリカ大学留学のための返済不要の奨学金で詳しく紹介しています。


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ハーバードでの4年間と、挑戦する高校生へのメッセージ
英語と文化の壁を越えて、学業とNCAAを両立

TOEFLで104点を取って渡米した私も、入学直後は日常会話を聞き取れないことがありました。
チームメイトが話す英語は速く、ドラマや俳優、有名なスポーツ選手の話題、スラング、テキストで使う省略表現などが分からないこともありました。
友達を作る時も、日本の高校までのようにはいきませんでした。同じように英語以外を母語とする留学生や、気軽に相談できる先輩を見つけるまで時間がかかりました。
それでも、授業、チーム、寮生活の中で分からないことを一つずつ聞き、少しずつ英語での生活へ慣れていきました。
大学では科学史を専攻し、東洋医学や日本の身体文化の歴史などを学びながら、女子アイスホッケー部で競技を続けました。

もっと早くやっておけばよかったこと

一つ目は、学校の成績をもっと意識することです。
高校2年生の冬までは日本の大学受験を考えていたので、定期試験や成績がアメリカ大学出願へどう影響するかを知りませんでした。
アメリカ大学では高校時代の成績も審査されるため、海外進学をまだ決めていない段階でも、学校の勉強を大切にすることが後の選択肢につながります。
一方で、過去の成績が良くなかったからといって、そこで決まるわけではありません。
私も高校1年生で成績が良くなかった科目を高2以降に伸ばし、右肩上がりの成績表を提出できました。
二つ目は、短期留学や国際交流です。
私は日本の生活が心地よく、高校で募集されていた海外プログラムに参加しませんでした。
短期間でも異なる文化の中で生活し、英語で友達を作る経験があれば、渡米後の戸惑いを少し減らせたと思います。
三つ目は、アメリカの歴史や文化、社会問題について学んでおくことです。
英語を聞き取れても、会話の背景が分からなければ内容を深く理解できません。
ニュース、映画、本などを通して、言葉と一緒に文化を知ることも大学生活の準備になります。
卒業後も海外で挑戦を続ける理由

ハーバード大学を卒業した後は、オーストリア、フィンランドなどヨーロッパのチームでプレーしています。
高校時代は海外留学にほとんど興味がなかった私が、今は海外でプロ選手として活動しています。
高2の冬に環境を変える決断をしたことで、アイスホッケーだけでなく、出会う人や価値観、将来の選択肢も大きく広がりました。
初めての海外生活では苦労もありました。それでも、知らない場所で一つずつできることが増え、自分の世界が広がっていく感覚は、海外で挑戦を続ける大きな理由になっています。
家族の信頼とサポートが、最後まで支えになった
海外大学への挑戦を実現するまで、家族から大きな支えを受けました。
代表から外れて落ち込んでいた時、両親が海外という選択肢と、ハーバード大学のアイスホッケー部を見つけてくれました。
その後も、コーチとの連絡、大学訪問、日本とアメリカの大学受験を支えてくれました。
何より大きかったのは、私が決めた進路を信じてくれたことです。
前例の少ない道で結果が見えない時にも、挑戦そのものを応援してもらえたことが支えになりました。
終わりに:今ある強みから、海外大学への道を探してみよう
高2の冬から約1年でハーバード大学へ合格した経験だけを見ると、短期間で起きた特別な成功に見えるかもしれません。
Moonさんを支えたのは、学校で身につけた英語の基礎、5歳から続けてきたアイスホッケー、日々の学業や校内活動でした。その積み重ねを、海外大学への道につなげています。
大切なのは、誰かと同じ実績を作ることより、自分が続けてきたことをどの環境で伸ばしたいのかを考えることです。
スポーツ、音楽、研究、地域活動など、今取り組んでいることを海外大学でも続けたいなら、まずはその分野に力を入れている大学を調べてみてください。
チームや学部のページを開き、実際に活動している学生やコーチ、授業を知ると、漠然としていた海外進学が少しずつ具体的になります。
高2、高3になってから選択肢を知った人にも、これから動かせる部分があります。
今の状況を整理し、大学やコーチへ自分から確かめることで、まだ見えていない道が見つかることがあります。



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