



IELTSスピーキングの模試や本番で、「話す内容が思いつかない」「Part 2で時間が余る」「言い直しばかりで話が途切れる」
——そんな経験をした人も多いのではないでしょうか。
しかし、安心してください。
こうした失敗には共通する原因があり、正体が分かれば対処法もそれぞれ見えてきます。
なぜなら、IELTSスピーキングは「考えながら英語を組み立てる」処理を評価する試験だからです。
この記事では、IELTS(Academic)で8.0を取得した筆者が、自身も経験した3つの失敗例を、公式の採点基準と接続しながら解説します。
読み終わる頃には、「自分がどの段階で止まっているのか」を言語化でき、次に何を練習すべきかが絞れるはずです。
この記事の著者:Yuta
4年生大学にて英語学(統語論・音韻論)専攻。大学卒業後はフィリピンに留学し大学で1年間自己の英語力を伸ばす。TOEIC公開テストL&Rでは945点、IELTS(Academic)では8.0点 C1 Levelを獲得済み。現在は私立教員とWebライターとして活動している。
監修者:ウメンシャン
日中英のトリリンガル・言語オタク。英語圏留学経験なしからIELTS8.0、TOEFL104、GRE322。コロンビア大学・ペンシルバニア大学・ニューヨーク大学・メルボルン大学教育大学院に合格実績を持つ。慶應義塾大学大学院卒。
- 難しさの正体:質問理解・内容決定・英文生成・発音を同時に処理する試験だから。知識やセンスの問題ではない。
- 失敗1(内容が出ない):専門知識は不要。作り話や仮定の話でもOKと公式が明言している。
- 失敗2(時間が余る):「余ったら自動減点」ではない。話を具体化する要素の不足が本当の原因。
- 失敗3(言い直しが多い):言い直しは一律減点ではない。言い直しに「依存」するとバンド5にとどまる。
- 改善の第一歩:3つの失敗から自分の練習課題を診断し、練習を絞ること。
目次
IELTSスピーキングが難しいのは、考えながら英語を組み立てるから
IELTS公式の2024〜2025年データによると、第一言語を日本語とするAcademic受験者の平均は、Listening 6.0、Reading 5.9、Writing 5.6、Speaking 5.5でした。
4技能の中でSpeakingが最も低く、日本語話者がつまずきやすい傾向が数字にも表れています。
出典:IELTS公式 Test taker performance 2024–2025
質問を聞いてから話すまでの4つの処理
IELTSスピーキングでは、質問を聞いた数秒後には回答を始めます。
Part 1とPart 3には準備時間がなく、Part 2で与えられる準備時間も1分です。その短い時間で、次の4つの処理を進めます。
- 質問理解:何を聞かれているか捉える
- 内容決定:自分の経験や意見から、話す内容を決める
- 英文生成:語彙と文法を選び、文を組み立てる
- 発話:相手に伝わる発音とイントネーションで話す
例えば、Part 1で次の質問をされたとします。
Do you often wear jewellery?
質問の意味はすぐに分かります。難しいのは、ここから先です。
「自分は着けない」と答えるのか、家族の指輪の話まで広げるのか。どの単語を使い、どの時制で話すのか。最初の文を話しながら、次の文も組み立てていきます。
さらに、見聞きして理解できる「受容語彙」と、自分で取り出して使える「産出語彙」は別物です。
スピーキングで問われるのは、覚えた語彙を数秒で取り出し、文の中で使う力です。
処理の詰まりは4つの評価基準に表れる
試験官は、口から出た英語を次の4つの基準で評価します。
- 流暢さと一貫性(Fluency and Coherence)
- 語彙力(Lexical Resource)
- 文法の幅と正確さ(Grammatical Range and Accuracy)
- 発音(Pronunciation)
4つの基準は同じ比重で評価され、それぞれSpeakingスコアの25%を占めます。
IELTS公式は「流暢さと一貫性」を見るポイントとして、話す速度や継続性に加え、言いかけて戻ること、同じ表現の不必要な反復、単語を探すための沈黙などを挙げています。
語彙が出てこなければ沈黙に、文法を考え直せば言い直しに、話す内容が決まらなければ短い回答や繰り返しに——頭の中で詰まった場所が、そのまま症状として回答に表れます。
4つの評価基準とバンド別の違いは、IELTSスピーキングの採点基準とスコア別レベルで詳しく解説しています。


失敗1:トピックを聞いても話す内容が思いつかない
筆者がIELTSを初めて受験したとき、Part 3で医療について質問され、頭が真っ白になったことがあります。
「昔の医療と今の医療には、どのような違いがありますか」と聞かれたものの、医療の歴史や制度に詳しくありません。
正しい答えを探しているうちに沈黙が長くなり、英語を話すところまで進めませんでした。
馴染みのないトピックでは、英語力より先に「詳しいことを言わなければ」「間違った内容を話したくない」という構えが沈黙を生みます。話す内容を決める段階で、止まってしまうのです。
IELTSが評価するのは、英語で考えを伝える力
IDPの公式解説では、IELTSスピーキングの質問に答えるために、専門的な知識や訓練は必要ないと説明されています。
試験官が確認するのは、流暢さ・語彙・文法・発音を使って考えを伝える力です。知識量や意見の正しさは、採点の対象外です。
例えば、先ほどの医療に関する質問なら、詳しい歴史を知らなくても、身近な変化から回答を始められます。
Q. How is healthcare today different from healthcare in the past?
回答例:
I don’t know much about the history of healthcare, but I think technology is the biggest difference. Today, doctors can use advanced equipment to find illnesses earlier, and patients can also get medical information online.
日本語訳:
医療の歴史にはあまり詳しくありませんが、最大の違いは技術だと思います。現在は高度な機器を使って病気を早く発見できますし、患者もオンラインで医療情報を得られます。
使っているのは、誰でも話せる身近な材料だけです。
「詳しくない」と短く伝えたうえで、技術・検査機器・オンライン情報という、自分が説明できる範囲へ話をつないでいます。
筆者も初受験を振り返ると、「正確で専門的な答え」を探すあまり、手元にあった使えるアイデアを見落としていました。
答えが浮かばないときは、近い経験へつなぐ
馴染みのない質問に出会ったら、次の3段階で話す材料を探します。
- 質問に直接答える:Yes / Noや自分の立場を先に示す
- 接点を探す:自分・家族・友人・学校・ニュースなど、近い経験へつなぐ
- 一つ具体化する:誰が、いつ、何をしたか、なぜ印象に残ったかを加える
例えば、ジュエリーに興味がない人が次の質問をされたとします。
Q. Do you often wear jewellery?
この場合も、家族の経験へつなげば十分に答えられます。
Not really. I rarely wear jewellery myself, but my mother has a ring that she has worn for years. It was a gift from my grandmother, so it means a lot to her.
(ほとんど身につけません。ただ、母には何年も着けている指輪があります。祖母から贈られたものなので、母にとって大切な指輪です)
最初に自分の答えを示し、母親の指輪へ話をつなぎ、祖母からの贈り物という具体的な情報を加えています。質問との関連性を保ったまま、自分が説明できる話へ広げた形です。
作り話を使うときは、途中で設定を変えず、最後まで説明できる内容を選びましょう。
頻出トピックを使って「自分・家族・友人のどの経験につなげられるか」を準備したい人は、IELTSスピーキングの例題と解答例も活用してください。


失敗2:Part 2で話が尽きて時間が余る
筆者の初受験では、ファッションに関するPart 2のトピックが出ました。
もともと服装への関心が薄く、トピックカードの箇条書きに一通り答えたところで、話したいことがなくなりました。スピーチは1分ほどで止まり、その後も話を広げられませんでした。
Part 2で時間が余る人がつまずいているのは、多くの場合「一つの話題をエピソードへ展開する」段階です。
採点では「長く話し続ける力」が見られる
IELTS公式では、Part 2をIndividual Long Turnと呼んでいます。
受験者は1分間で準備し、トピックについて1〜2分話します。2分に達すると試験官が止め、その後に関連する質問が1〜2問入る流れです。
採点で見られるのは、冒頭で紹介した4つの評価基準です。「何分話したか」という回答時間そのものは、独立した採点項目に入っていません。
一方、「流暢さと一貫性」のBand Descriptorsでは、Band 6に長い発話を続けようとすること、Band 7に目立った努力なしに長い発話を続けられることが記載されています。
筆者の初受験で本当に痛かったのは、スピーチが約1分で終わったあと、話を広げられずに沈黙してしまったことでした。
練習では、1分40秒〜2分程度まで、話の流れを保って説明できる状態を目指すと、本番でも余裕を持ちやすくなります。
Cue Cardを骨組みにして、エピソードを広げる
Part 2のトピックカードには、話に含めるポイントが書かれています。
ただし一文ずつ答えるだけでは、箇条書きを読み上げるような短いスピーチになりがちです。
IELTS公式サンプルに、次のトピックカードがあります。
Describe something you own which is very important to you.
You should say:
- where you got it from
- how long you have had it
- what you use it for
- and explain why it is important to you
箇条書きに一文ずつ答えると、次のようになります。
> My laptop is very important to me. I bought it two years ago. I use it for work and study. It is useful and convenient.
すべてのポイントには触れていますが、「いつ買ったか」「何に使うか」という基本情報だけで終わっています。
ここに場面や出来事を加えると、同じトピックでも話を自然に広げられます。
Part 2で加えたい4つの材料
- 背景:いつ、どこで、どのような状況だったか
- 具体的な使い方:普段どのように使っているか
- 出来事:その物や人、場所に関する印象的な経験
- 意味・変化:なぜ大切なのか、自分にどんな影響があったか
例えば、準備時間に次のキーワードをメモします。
first salary → online course → every morning → broke before deadline → essential for my work
このメモがあれば、次のように話し始められます。
> I’d like to talk about my laptop, which I bought with my first salary about two years ago. At the time, I had just started an online course, so I wanted a computer that I could use for both work and study. I now use it every morning to check emails, attend online meetings and prepare documents…
背景から日常の使い方まで広がり、聞き手が場面をイメージできる回答になります。
準備時間のメモは、完成した英文ではなくキーワードで十分です。IELTS公式も、短いフレーズを英語で書き、話す順番に並べる方法を勧めています。
Part 2でも経験の創作は可能ですが、1〜2分話し続ける分、実体験に近い題材の方が詳細を思い出しやすく、一貫性も保てます。
試験官経験者も「英語で説明しやすい例、できれば実際の経験」を選ぶよう勧めています。


失敗3:正しく話そうとして言い直しが増える
筆者のスピーキングが6.0前後だった頃、1回の試験で10箇所ほど言い直しをしていました。
「文法を間違えたら減点される」と思うほど言い直しが増え、言い直すほど話が途切れる——この悪循環は、真面目に勉強してきた人ほど陥りやすい失敗です。
言い直しは「一律減点」ではない
ここで公式の採点基準(Band Descriptors)を見てみましょう。
実は、言い直し(self-correction)やためらい(hesitation)は、バンド7の記述にも登場します。
| バンド | 流暢さと一貫性の公式記述(要約) |
|---|---|
| 7.0 | 目立った努力なしに長く話し続けられる。言い直しやためらいがあってもよいが、それは適切な表現を探す際に時々起こる程度 |
| 6.0 | 話し続けられるが、ためらい・繰り返し・言い直しによって一貫性が時々失われる |
| 5.0 | 繰り返し・言い直し・ゆっくり話すことに頼ってようやく話を続けられる。基本的な語彙・文法を探す沈黙が頻繁に起こる |
出典:IELTS Speaking Band Descriptors(public version)
つまり評価の軸は「言い直しの回数」ではなく、「言い直しに頼らないと話を続けられないかどうか」です。
6.0前後で止まっている人は、言い直しをゼロにする練習ではなく、「言い直しても流れを止めない」話し方に切り替える必要があります。
難しい単語・文法を使おうとするほど、処理が追いつかなくなる
言い直しが増えるもう一つの原因は、「高得点には難しい表現が必要」という誤解です。
IELTS公式はこの誤解を明確に否定しています。
「難しい単語を使えば高得点が保証されるわけではない。正確に・柔軟に・適切に使うことが高得点につながる」——そして語彙は採点全体の25%にすぎません。
British Councilの試験官経験者も「意味と形に100%の確信が持てない単語は使わない」ことを勧めています。
背伸びした語彙・文法・日本語からの翻訳を同時に処理しようとすると、脳の処理が追いつかず、沈黙と言い直しが増える。
それなら、使い慣れた語彙と構文で流れを保つほうが、「流暢さと一貫性」の評価は上がります。
使い慣れたフレーズの引き出しを増やしたい人は、IELTSスピーキングのフレーズ・単語の覚え方の記事を参考にしてください。


3つの失敗から、次にやる対策を選ぶ
ここまで紹介した3つの失敗は、必要な練習がそれぞれ異なります。
まず例題を1問選び、自分の回答を録音してみましょう。録音に最も強く表れている症状から、次に取り組む対策を選びます。
| 当てはまる症状 | 最初にやること | 次に読む記事 |
|---|---|---|
| 話す内容が思いつかない | 例題を3問選び、自分・家族・友人のどの経験につなげられるかをメモする | スピーキングの例題と解答例 |
| Part 2で話が続かない | 回答を録音し、「背景・出来事・意味」のどこが抜けているか確認して、もう一度話す | Part 2の例題と解答例 |
| 言い直しや沈黙が多い | 単語を探して止まった箇所に印をつけ、知っている表現で言い換えて再回答する | 語彙力とフレーズの増やし方 |
| 原因を自分で判断できない | 録音を流暢さ・語彙・文法・発音の4基準に分けて確認する | 採点基準とスコア別レベル |
筆者自身も、「録音→聞いて修正→同じ質問に再回答」のサイクルを2日に1回のペースで約1年間続け、Speakingを5.5から6.5まで伸ばしました。
一度の録音ですべてを直そうとせず、今回は「沈黙」、次は「話の具体性」というように、確認する項目を一つに絞ると改善点が見えやすくなります。
録音を聞いても原因を特定できない場合や、受験までの期間が短い場合は、記事末尾のIELTSスピーキング対策講座も選択肢になります。


IELTSスピーキングによくある質問
回答を暗記して話してもいいですか?
回答全体の暗記は避けましょう。
IDP公式は、暗記した回答は試験官に伝わりやすく、最終的なバンドスコアに影響する可能性があると説明しています。
覚えるなら、使い慣れたフレーズと、複数のトピックに応用できるエピソードです。本番では質問に合わせて、その場で組み立てて話します。
話す内容が思いつかないときは、作り話でもいいですか?
構いません。
IDP公式も、経験がないトピックでは、家族など身近な人の経験を使ったり、内容を創作したりする方法を紹介しています。
意識すべきは、質問との関連性と話の一貫性です。途中で設定を変えず、最後まで説明できる内容を選びましょう。
Part 2は2分間話し続けないと減点されますか?
公式ではスピーチ時間を1〜2分とされており、2分未満で終わったことだけを理由に自動的に減点されるルールはありません。
ただし「長い発話を続ける力」は流暢さと一貫性で評価されるため、練習では1分40秒〜2分を目安に話を広げましょう。
言い直しをすると減点されますか?
言い直しの回数に応じて、機械的に点数が引かれるわけではありません。
公式のBand Descriptorsでは、Band 7でもためらい・繰り返し・言い直しが起こるとされています。ただし、それによって話の一貫性が崩れていないことが重要です。
間違えた部分だけを短く修正し、そのまま本筋へ戻りましょう。
アメリカ英語とイギリス英語、どちらで話すべきですか?
どちらでも構いません。特定のアクセントをまねる必要はなく、発音の評価で見られるのは、聞き手がどの程度の負担で理解できるか、強勢やイントネーションで意味を伝えられているかです。
普段から使い慣れている発音を土台に、相手が聞き取りやすい話し方を目指しましょう。
まとめ:今日、例題を1問だけ録音してみよう
本番でうまく話せなかった場面には、次に取り組むべき課題が表れています。
ここまで読んだら、例題を1問だけ選んで録音し、いちばん気になる症状を一つ直して、同じ質問にもう一度答えてみてください。
最初の録音と聞き比べれば、小さな変化も自分の耳で確認できます。
この「話す→確認する→直してもう一度話す」の積み重ねが、本番で使える英語を作ります。
Part 1・2・3の答え方や練習方法をまとめて確認したい人は、IELTSスピーキング対策の総合ガイドから、自分に必要な練習へ進んでください。

- IELTSスピーキング対策完全ガイド:試験形式・採点基準・Part別攻略の全体像。
- 独学で5.0→7.0のロードマップ:毎日の練習メニューとスコア帯別の壁の越え方。
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