アメリカの大学を受験するのであれば、SATスコアが必要な場合はあります。
もちろんテスト・オプショナルの学校(SATの提出が任意の学校)が増えているとはいえ、SATで高得点を取ることができれば基礎学力のアピールにもつながります。
今回はSATの2科目のうちの1つ、Mathセクションの概要と勉強法について、実際にアメリカ大学受験・SAT受験を経験した筆者の立場から詳しく解説していきます。
この記事の著者:Tani
日本の高校から海外に2年間留学し、アメリカの大学受験を経験。IELTS Academic8.0、SAT 1480点。2022年秋より、全米トップ5のリベラルアーツカレッジに進学。
目次
※本記事は旧SATに基づいて解説。2023年からDigital SATに移行し、問題数や試験時間に若干変化はありますが、Mathの対策方法は参考にできます。新SAT(Digital SAT)の概要はこちら。
SATの概要
SATは、アメリカの大学受験の際に各大学に提出する試験です。
MathとEnglishの2セクションからなり、各800点、合計1600点満点です。
理系科目であるがゆえに、ノンネイティブスピーカーでも比較的高得点が取りやすいのがMathセクションの特徴。
Englishで高得点をなかなか狙いづらい日本人にとっては、貴重な点数の取り所です。
Mathはよく「簡単だ」と侮られがちではありますが、高得点を狙っていく上で、絶対に落としてはなりません。
SAT・Mathの概要
SATのMathは、計算機を使えない「No calculator」と、計算機を使用できる「Calculator」に分かれています。
- 25分20問
- 最初の15問は4択の選択問題
- 残りの10問は答えを直接記入
- 55分38問
- 最初の30問は4択の選択問題
- 残りの8問は答えを直接記入
これら「No calculator」と「Calculator」の点数を合わせたものが、Mathの点数となります。
ただし、Mathの最終的な点数は他の受験生の成績なども勘案して総合的に決められます。
全問正解や一問間違いであれば、基本的には満点と思って良いでしょう。
問題内容
SATのMathは、問題文こそ全て英語ですが、問われている数学の内容は極めて簡単です。
実際の問題の画像と共に、問題例を紹介していきます(問題文はSAT Practice Test #1 と SAT Practice Test #3 から)。
Math test: No calculator の問題内容
次の問題は、No calculatorの第1問です。問題の内容は非常に簡単で、中学数学レベルです。
内容としては難しいもの、複雑なものは一切ありません。簡単な方程式・不等式や、グラフを使ったシンプルな問題(2次方程式の頂点を求める問題など)ばかりです。
Math test: Calculator の問題内容
Calculator では、計算機を使用する必要があります(計算機について詳しくは後述)。
計算機を使わずに手計算でできるような問題もありますが、下画像のように、計算機なしでは計算が厳しいような問題も出てきます。
こちらも問題の内容としては非常に単純で、「それぞれの割合を求めよ」といったようなもの。しかし、いくら内容が簡単でも手計算をするのには無理があります。
問題の種類と例
College Board (SATの運営団体)によれば、SAT Mathの問題の範囲は大きく分けて次の3種類に分かれています。
- Heart of Algebra (代数の基本)
- Passport to Advanced Math (高度な数学へのパスポート)
- Problem solving and Data analysis (データ分析)
Heart of Algebraに含まれるトピック
簡単な方程式・不等式・関数・グラフなどが含まれます。内容としてはどれも中学レベルで、高校数学レベルのものは基本的には問われません。
問題例:
Passport to Advanced Mathに含まれるトピック
二次以上の方程式・連立方程式などが含まれます。簡単な高校数学レベルです。
問題例:
Problem solving and Data analysisに含まれるトピック
データ(グラフ・図表)の分析などが含まれます。日本の数学ではあまりフォーカスの当てられない分野ですが、確率・統計の基礎知識があれば問題ありません。
問題例:
長い文章ですが、非常に簡単な確率の問題です。74/607を計算機で計算し、A)の答えを得ます。
その他のトピック
簡単な三角関数・幾何(図形の面積・角度)などが含まれます。三角関数については角度が90度までの非常に簡単なものが問われます。
問題例(三角関数):
問題例(幾何):
Mathで求められる知識
英語表現
日本の数学をやってきたのであれば、数学の知識には問題が全くないという方がほとんどだと思います。
Mathで満点近い点数を狙っていくためには、数学の問題で頻繁に使われる英語表現を覚えていく必要があります。
基本的な語彙
英語 | 意味 |
value | 値 |
constant | 定数 |
equation | 方程式 |
function | 関数 |
polynomial(s) | 多項式 |
formula | 公式・式 |
グラフに関する語彙
英語 | 意味 |
xy-plane | XY平面 |
origin | 原点 |
x-axis | X軸 |
y-axis | Y軸 |
x-intercept | X切片 |
y-intercept | Y切片 |
parallel | 平行 |
vertical | 垂直 |
slope | 傾き |
統計・確率・データに関する語彙
英語 | 意味 |
mean | 平均値 |
median | 中央値 |
mode | 最頻値 |
venn diagram | ベン図 |
こういった数学英語に関しては、実際の問題を解いていく中で覚えるのが一番です。公式で公開されているSAT Math の練習問題(詳しくは後述)をたくさん解き回しましょう。
また、もし問題文が全く理解できないのであれば、練習問題を解いてもあまり身につかないでしょう。
その場合は問題文が理解できる程度までに、数学関連の語彙を事前にインプットするのがおすすめ。こういった図解付きのサイトがおすすめです。
数学
問われている数学知識は、繰り返すようですが非常に単純なものです。
常識で解けるような問題も多いので、数学の範囲について心配する必要はありません。
SAT Mathで重要なのは、数学関連の英語の語彙を増やし、とにかく問題文の意味を理解することに尽きます。
ただし注意点として、SAT Math や、アメリカの数学全般の特徴として、実社会における数学の応用を重視しているという点があります。
SAT Math でも、単なる方程式やグラフだけでなく、実際の生活の中での数学の応用に関する問題が多く問われます。
例えば、こちらの問題では経済学における需要・供給の関係を、数式で表そうとしています。
数学のレベル自体は低いのですが、経済学に関するある程度の基礎知識(supplyとは何か、demandとは何か、など)がないと、問題文を理解するのが難しいかもしれません。
こちらの問題でも、数学を金融関係の計算(利子の計算)に応用しています。前提知識なしでは戸惑う可能性があります。
こういった少し特殊な問題に混乱せずに対処するためには、実社会での数学の応用や関連する専門語彙に慣れておく必要があります。
SATの他のセクションの対策も兼ねて、関連するような英文サイトを日頃から読むようにし、他分野に跨るような問題文を理解できるようにしておきましょう(読み物としても面白いです)。
(おすすめのサイト・ページ)
Mathで高得点を取るためのコツ
計算機(GDC)の使い方をマスターする
SATで日本人が躓きがちなのが、普段の数学では使わない「計算機」です。
計算機は英語でよく「GDC (Graphic Display Calculator)」と呼ばれ、調べてみると色々な種類の物が出てきます。
SATに持ち込むことのできる計算機というのは細かくルールで定められていて、こちらから細かい公式のポリシーを確認できます。
下の方に行くと、使うことのできる計算機のメーカー・ブランド・種類が一覧形式で表示されています。計算機を購入する際には、この中から選んで購入することになります。
どの計算機を購入すればいい?
計算機を購入するのであれば、Texas Instruments社の「TI-84」シリーズがおすすめ。
Texas Instruments社の、特に「TI-84」シリーズは(おそらく)最もスタンダードな計算機のブランドです。
みんなが使っているという安心感がありますし、使用人口が多い分、情報も簡単にインターネットで見つかります。少し高いですが、Amazonなどで購入しましょう。
理系の専攻に進む場合は大学進学後も使い続ける可能性がありますので、買っておいて損はしません。
計算機に慣れるには?
幸いなことにSATで必要とされる計算機の機能は限られており、複雑な関数やグラフを入力したりする必要はありません。
計算機に慣れるために、手計算で解けるような問題でも電卓の使用が許可される場合には積極的に計算機を使うのがおすすめ。
「計算機なんか使わなくてもできる」などと変なプライドを張ってしまうと、計算機を使うことになかなか慣れません。
日本語での数学の問題と同様、ケアレスミスを誘うような出題もよくされます。例えば下の問題では、単位が「hours」であることに注意が必要です。 問題文が英語である分さらに見落としをしやすいので、問題文は最後まで何を聞かれているのかを意識しながら読むようにしましょう。 高得点を狙うのはもちろん、満点を狙うのであればこういったミスがあってはなりません。 55分の時間が与えられる「Calculator」では比較的時間的余裕があるのに対して、25分しかない「No Calculator」では思っている以上に時間との勝負になりがちです。 問題が簡単とは言え、20問に対して25分ですから、時間に余裕はありません。重要なのは以下の3点です。 まず、大前提としてどちらのセクションでも「速く正確に解く」ことが一番大切です。見直しを2周以上できる時間的余裕を残した上で、全ての問題を確実に解きましょう。 日本人の数学能力でSATの問題が解けないことはまずありません。とにかく怖いのはケアレスミスですので、見直しは丁寧に何度でもしましょう。 もう一つ注意したいのは、やはり英語です。 問題文が短いもの、シンプルなものであれば問題ないのですが、いわゆる「文章題」と呼ばれるような長いものになると、手が止まりがちです。 1問に1分以上かけていては時間が危ないので、「手が止まりそうだな」と思ったら、すぐに次の問題に行くのがおすすめです。 SAT Math は、日本人であれば(日本の数学教育を受けていれば)、比較的簡単に高得点が狙えます。しっかりと苦手分野を対策すれば、満点も夢ではありません。 勉強法としては、まずは手始めに練習問題を順に解いていき、その都度出てきた英語表現を覚えたり、数学の範囲を覚えたりしていくのがおすすめです。 SAT Practice Test は、SATを運営するCollege Boardというアメリカの団体が無料でネット上に公開しているSATの過去問題集です。 PDFで配信されており、ダウンロードして自由に使うことができます。 SAT Practice Test は、合計8回分あります。Practice Test 1 から順に素直に解いていきましょう。間違えた問題はもちろん解き直しをし、分からなかった英語表現はその場でしっかりと覚えます。 また、SAT Mathは満点を狙える科目ですので、すぐに別の回の問題に移るのではなく、満点になるまで同じ回を解き続け、満点を取れたら次の回に行くやり方がおすすめ。 問題が8回分しかないので、どんどん次へ次へと解いていってしまうと問題数が足りなくなってしまいます。 Khan Academy も、SAT対策でおすすめのサイトです。SATの無料の練習問題が数多く用意されています。 練習問題一覧の画面は、このような感じ。内容はやはり非常に簡単で、わざわざ問題を解く必要がないという人も多いとは思いますが、役には立つかと思います。 右の「Practice」ボタンから、それぞれの問題を詳しくみることができます。 一番最初の「Solving linear equations and linear inequalities」であれば、こんな感じ。SATの本番に出てきてもおかしくない問題です。 過去問を解き切った後に少し練習をしたり、過去問を解き始める前に試験問題の傾向を調べたりするのにおすすめ。 今回見てきたように、SATのMathセクションは非常に簡単です。 日本の数学教育を受けてきたのであれば、少なくとも8・9割は取っておきたいところ。数学英語と計算機の使い方さえマスターすれば、満点も狙えます。 SATはEnglish(特にReading)が難しい分、Mathで確実に点数を稼いでおきたいところ。一問も落とさない、そんな心意気で臨みましょう。 問題文をしっかり読む
時間について
Mathの勉強法
SAT Practice Test を活用する
Khan Academy の練習問題を解く
まとめ
わかりやすい記事ありがとうございます!
SATに使用する電卓は、TI-89 TitaniumかTI-84 どちらが良いですか?