




海外生活歴がなく、普段英語で話すこともほとんどなく、スピーキングには苦手意識を持っていた私が、英検1級二次試験(スピーキングテスト)に約4か月の間トレーニングで合格しました。
その方法をまとめてみましたので、何かの参考になれば幸いです。
この記事の著者:谷山俊哉
英語と無縁の仕事に就きながらも、英語に対する憧れは続き、数多の教材に頼ろうとする試みを続けたが、挫折が続く。ある時、たまたま、書店で某教材を手にしたことから、ニュース英語を糸口としていけばいいことに気づき、ようやくきちんと英語に取り組み始める。これを端緒に英語力が伸び、全国通訳案内士、英検1級に合格。
目次
英検1級面接の基本

面接の試験形式
英検1級は、日本英語検定協会が主催する検定で、一次試験は筆記とリスニング、二次試験は面接形式のスピーキングテストです。二次試験の面接時間は約10分で、試験官はネイティブ1人、日本人1人の計2名です。
面接では、自由会話の後にスピーチを行い、最後にスピーチに関連した質疑応答が行われます。
自由会話は、短時間の簡単な日常会話です。スピーチでは、5つのトピックが英語で書かれたカードを受け取り、その中から一つのトピックを選び、1分間でスピーチ内容を考え、2分間でスピーチを行います。そして、スピーチの後、4分間スピーチ内容や選んだトピックに関する質問に応答します。
レベルと合格率
英検1級のレベルは、TOEFLE iBTに換算すると95点から105点くらい、TOEICに換算すると880 点から950点くらいといわれることが多いですが、あくまでも別々の試験であり、目安にしかすぎません。
では、実際には英検1級の合格率はどの程度なのでしょうか。
近年、合格率は公表されてない様子ですが、2015年ころまでの数字を見ると、1級全体の合格率は約8%から約11%で、二次試験に限ると合格率は約60%から約66%程度となっていました。
一次試験に合格できる人の半分以上は二次試験にも合格できると思われますが、一次試験の合格者は日本人としては相当英語ができる人ばかりで、その中でも30%から40%程度の人が不合格になるのだと考えると、簡単な試験とはいえません。
受験時期と会場
英検1級の一次試験は年3回、1月、6月、10月に行われ、一次試験の合格者が翌月に二次試験を受験することができます。また、一次試験に合格できれば、二次試験は1年後まで(最大4回)受験することが可能です。
英検1級の一次試験は全国各地で受験できますが、二次試験になると受験地は全国11都市(札幌、仙台、横浜、東京、新潟、名古屋、京都、大阪、広島、福岡、那覇)に限られてしまいますので、お住まいがこれらの都市から離れている人は注意が必要です。
それでは、英検1級二次試験への必勝を期して、私が考え、実行した方法を紹介していきます。試験までの期間は約4か月で、電車通勤の時間も活用しながらの二次試験準備でした。

英検1級の二次試験について

実際にどのような形で試験が進み、どのようなスピーキングをする必要があるのか知ることが、対策の第一歩です。
具体的な二次試験の流れを知る
具体的な二次試験の流れを知るには、英検公式サイトにある、「バーチャル二次試験」と名付けられた面接場面を模したアニメ動画が最適です。
臨場感をもって流れを知ることができます。

実際の試験室への入室から退室までどう進むのか、自由会話の進み方、スピーチの始め方、質疑の様式、トピックカードの受け取り方や返し方などを知ることができ、とても参考になります。
この動画のようにできればおそらく満点でしょうが、当然、そこまでうまくできなくとも合格は可能です。
過去問を知る
日本英語検定協会 英検1級過去問より引用
最初の自由会話の部分は、名前の確認プラスアルファというような内容なので、最初に短時間の日常会話的な部分があることを知っていれば、特に入念な対策や準備をする必要まではないでしょうが、天候、交通機関、自己紹介等の表現の復習はしておいた方がよいかもしれません。
スピーチについては、過去にどんなトピックが出題されていたのかを知ったうえで対策を立てました。
1級のスピーキングで期待されるのは、主催者(日本英語検定協会)によると、「社会性の高い幅広い話題についてやりとりをすることができる」ことです。
これまでには、政治、経済、科学、芸術、環境、人権、犯罪、教育等多岐にわたる社会性の高いトピックが出題されています。
英検公式サイトでいくつかの過去問を知ることができますが、ごく一部でしかないので、全貌を知るためには、過去問を収録した市販の書籍を購入することになりましょうか。
ここでポイントになるのは、提示される5つのトピックの中から、1つを選んでスピーチすればよいという点です。
すなわち、全ての分野に対してスピーチする能力をつける必要はなく、苦手でない分野でスピーチすればよいわけです。
例えば、政治、経済、科学、芸術に関する話題が苦手としても、それ以外の環境、犯罪、教育等の話題についてある程度のスピーチができれば大丈夫ということになります。
自分自身が経験して具体的に知っている分野であれば、スピーチを組み立てやすいし、その後の質疑応答も楽に進めることができます。
こうしたことがわかるとぐっと気分が楽になりました。
また、「一次試験に合格できる英語力を持つ人なら、時間があれば二次試験のスピーチの原稿を書けるし、スピーチ後の質問に対しても、十分な時間があれば答えることができるはずである。こうしたことを、時間をかけずにできるようにすればよい。」ということもわかりました。


スピーチ対策:スピーチを組み立てる力をつける

スピーチの型を身につけ、瞬発力をもって英語が口から出るようにすることが大切だと考えました。
型が身についていないと、構成を考えるのに時間をとってしまいます。
瞬発力がないと、制限時間内に筋道のとおった英語でまとまった内容を話すことはできないし、質問に対してもぎくしゃくした応答しかできないでしょう。
スピーチの型を知る
型というのは、introduction, body, conclusionの3つの部分でスピーチを構成するということです。
この構成は一次試験のエッセイの構成にもつながるので、エッセイ対策はそのまま二次対策につながってきます。
型に沿ったスピーチといっても、展開のさせ方は1種類だけではありません。多くの種類に習熟するのは容易ではないので、単純な形式に習熟できれば大丈夫だろうと思いました。
また、受験するのは日本人なので、ネイティブほど流ちょうに話す必要はなく、それよりも、筋道のとおったことを話すことが大切に違いないと思いました。
そこで、次のように考えました。
Introductionは、内容を考えすぎるときりがないし、完璧なスピーチをする必要もないので、「〇〇と考える人もいるが、私は△△と考える。」と話す程度でよいだろう。
Bodyでは、スピーチが2分間と短時間であることから、理屈の通る理由を、firstly, secondlyと2つあげる程度でよいだろう。
Conclusionでは、余分なことを話すと墓穴を掘るかもしれないので、あらためて自身の結論的な考えを述べるのみでよいだろう。
そして、このような型を身につけようと考えました。
スピーチを口に出し、書いて、型を身につける
英検1級一次試験のエッセイに対応できる力があれば、自分でスピーチを組み立てることはできます。
そこで、まずは過去問から苦手ではないトピックを選び、実際にスピーチを口に出してみました。一応おおよその時間を計っていましたが、最初のうちは時間をあまり気にせずにやっていました。
口に出した後は、少し手間がかかりますが、書きだします。書くことで、表現の仕方が妥当だったか吟味できます。
また、よりよい内容や表現を考えやすくなりますし、よりよい表現を調べたうえで書くこともできます。当然、最初口に出した内容と、書いたものとは異なったものになっていきます。
書くことで、内容も頭に残りやすくなりました。スピーチなれども書くことは大切です。
なお、書籍やネットにある模範例は、かなり語数が多く、高度な表現を使っているものも少なくありませんが、実際にはそれよりも相当少ない語数で、ありふれた表現を用いてゆっくりめにスピーチしても大丈夫です。
苦手ではないできるだけ多くの分野を網羅し、この要領で30個程度のスピーチを作ってみます。そうすれば、次第に時間内にできるようになり、スピーチの型や所要時間を体で覚えることができます。
スピーチの内容を暗記する必要はないでしょう。暗記は苦痛ですし、暗記するよりも、考えを英語にするトレーニングをした方が効果的だと思いました。

質疑応答対策:英語を素早くアウトプットする力を強化

普段英語で話すことが多い人は英語の素早いアウトプットに困難はないのでしょうが、私のように普段ほとんど話さない場合は素早いアウトプットは容易ではありません。
時間をかければきちんとスピーチ案を考えてスピーチでき、質問にも時間をかけて考えればきちんと応答できたとしても、時間が不足したり、質疑がぎくしゃくしてしまったりすると、合格が危ぶまれてしまいます。
そこで、普段英語で話す機会が乏しい場合は、素早く英語をアウトプットする、瞬発力をつけるトレーニングも必要になってきます。
質疑応答のトレーニング
2.2でスピーチし、それを書きだした後は、どんな質問が出そうか、どんな応答ができそうか、英語で想定問答してみます。これをトピックごとに繰り返すことで、英語での表現に慣れ、実際の応答のスピードも上がっていきました。
このトレーニングの中で、例えば、言いたい単語を知らなかったり思い出せなかったりした時には、別の言い方で表現するという練習もでき、英語の表現力が上がりました。
日にちをあけて代表的なトピックでのスピーチと質疑反復
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2.2で考えたスピーチを、1週間から10日ほど日にちをあけた後に、原稿を見ないで口に出します。一つのトピックにつき、日にちをあけて3回程度これを繰り返すと、戸惑わずにスピーチできるようになっていきました。
また、以前自分が考えたスピーチと違う論点に気づき、スピーチの内容も変化していきました。
こうしたことの繰り返しで、考えたことを素早く英語にする力がつき、スピーチの内容も豊かになっていきました。また、新たに気付いた論点をメモしておくと、後日、同一トピックでスピーチのトレーニングをする際に参考となります。
スピーチした後は、自分で質問を考え、これに答えて会話を発展させる質疑問答のトレーニングを行います。それにより、本番で焦らずにスムーズに英語を口にする力が増していきました。
スピーチと質疑応答の実践トレーニング
普段英語を使用しない環境にあったので、実践的な感覚をつかみにくいと感じました。そのため、ネイティブスピーカーを相手に、実際にスピーチと質疑応答をするトレーニングも行いました。
私の場合は、教養がありしかも費用もリーズナブルなネイティブ講師をネットで探し、個人レッスンを受ける契約をし、週1回1時間程度、実際のスピーチと質疑応答のトレーニングを行いました。
この時に注意しないといけないのは、教養があるネイティブの人にお願いしないと効果が不十分になってしまうという点です。
二次試験は幅広い社会性のあるトピックを扱いますので、こうしたトピックに対する十分な教養がないと、スピーチの評価や十分な質疑応答が困難となってしまいます。
レッスンの際には、自分で作成したスピーチ原稿を持参したうえで、原稿を見ずにスピーチし(暗記していないので、当然、持参したスピーチ原稿と、スピーチは異なったものになっていきます。)、ネイティブ講師の質問に答え、会話を発展させます。
この時、ネイティブ講師には時間を計ってもらい、制限時間の2分で終わる感覚もつかむようにしました。
その後、本番同様の4分間を目安に、質疑応答も行い、更に、スピーチ原稿を添削してもらいました。また、ある程度慣れてくると、ネイティブ講師にいくつかトピックを考えてもらい、それに応じたスピーチや質疑応答をするトレーニングも行いました。
最初は、ぎくしゃくしたスピーチと応答でしたが、次第に、話すスピードは遅いものの、制限時間の中であまり戸惑わずに考えたことを英語で口にすることができるようになっていきました。
また、ネイティブ講師には、「文法的には正しいけれども、こんな言い方はしない。」と指摘されることが時々ありました。こうした指摘の結果、多少は自然に近い英語を使う力も向上したと思います。
新たなトピックでスピーチを考えるトレーニング
過去問や参考書に書かれているトピックのうち、まだ取り組んでいないものや、ニュースなどに出てきた社会性を持った話題を題材に、1分間準備し、2分間でスピーチを口に出してみるトレーニングです。
数分間でできますので、隙間時間を利用したり通勤通学の際の時間を活用したりして取り組むことができました。
電車の中で行う場合は、声を出さず、軽く口を動かす程度で大丈夫ですが、話すつもりになって口を動かすことは大切です。
このトレーニングにより、時間内に内容を組み立てて英語にしていくことが、次第にスムーズになっていきました。
英語で話す機会を増やす

普段英語で話す機会がほとんどどなかったので、上記ネイティブ講師の指導以外にも、価格がとてもリーズナブルなフィリピン人によるオンライン英会話レッスンを、1日25分程度、週5~6回受講しました。
とっさに英語を口に出すトレーニングをすることと、社会性のあるトピックでの会話に慣れることを目的に、レッスンは自由会話として、社会性のあるトピック(たとえば、alcohol, crime, divorce など)をこちらから指定して会話しました。
普段英語を話す機会が乏しい立場からすると、社会性のあるトピックについて素早く考え、英語を口に出すことに慣れるという効果がありました。
フィリピン人講師の方々は皆さん流ちょうな英語を話しますが、こちらが使用した単語(いわゆる難易度の高い単語)を知らない講師もおりますので、十分には満足できないレッスンとなることもある点は頭に入れておく必要があります。
教養を深める

社会性の高い幅広い話題についてやりとりをすることができるかどうかが問われる試験なので、社会問題などについて、日ごろから関心を持ち、ニュースに接しておくことも重要です。
そして、例えば、国際的にみて日本では女性管理職が少ないというニュースや児童虐待に関するニュースがあったとすると、その背景を考え、自分なりの根拠に基づいた意見を持ち、英語で表明できるようにするトレーニングをしてみます。
こうすることで、対応できるトピックが増え、スピーチでの表現の幅も広がっていきます。
最後に
英検1級の二次試験は、ネイティブのような発音で流暢な英語を話すことができなくとも、また、一次試験で問われるような難度の高い単語を使わなくても、標準的な単語で内容のある英語を大きな間違いなしに話すことができれば合格できる試験だと思います。
また、スピーチで自分の意見に対する明確な根拠を思いつかなかったとしても、知識を問う試験ではなく英語力を問う試験ですから、いざとなれば、とりあえず理屈がとおるように話せば大丈夫だと思いますので、臆さずに試験に臨めば良い結果を得られると考えます。
これから受験する方の検討をお祈りします。




