



海外大学院への出願準備。
TOEFLやIELTSのスコアメイクに追われる日々の中で、ふと書類リストを見て手が止まるのが「推薦状(Letter of Recommendation)」です。
成績証明書や卒業証明書は、大学の事務室に行けば発行してもらえます。しかし、推薦状だけは「他人の協力」がなければ手に入りません。
誰に、いつ、どのように依頼すべきか。そして、何を書いてもらうべきか。
この記事では、初めて海外大学院を目指す方が迷わず準備を進められるよう、推薦状作成の「全工程(完全ガイド)」をお届けします。
- 推薦状の「人選」の正解(教授か?上司か?)
- そのまま使える「英語フレーズ・例文集」
- 依頼から提出までの「5ステップ」完全フロー
目次
海外大学院における「推薦状」の基本
推薦状の準備に取り掛かる前に、まず「敵」を知りましょう。
審査官は推薦状のどこを見て、何を評価しているのか。その本質を理解することで、書くべき内容がおのずと見えてきます。
推薦状(Letter of Recommendation)とは
推薦状とは、大学の教授や職場の上司といった「第三者」が、志願者(あなた)について以下の要素を保証する手紙のことです。
- 学力・実務能力(Academic / Professional Ability)
- 性格・人柄(Character / Personality)
- 将来性(Potential)
欧米の大学院審査において、推薦状は極めて重要な役割を果たします。
GPA(成績)やTOEFLのスコアは、あなたの能力を「客観的な数値」で示しますが、それだけでは「リーダーシップがあるか」「困難をどう乗り越えるか」といった人間性は見えません。
そこで、GPA(客観指標)と同じくらい、第三者による評価(主観指標)が重視されるのです。
「数字では測れない魅力」を証明する唯一の書類、それが推薦状です。
必要な枚数と内訳:アカデミックとプロフェッショナルのバランス
一般的に、出願には2通〜3通の推薦状が求められます。
誰に頼むべきか(内訳)は、志望するコースによって最適なバランスが異なります。
- アカデミック推薦状(大学):
大学の教授や准教授からの推薦状。研究能力や学業成績を保証します。 - プロフェッショナル推薦状(職場):
職場の上司からの推薦状。実務能力やチームワークを保証します。
例えば、研究中心の修士課程(Master of Arts/Science)なら「アカデミック2通」が基本ですし、実務経験が重視されるMBAなら「プロフェッショナル2通」あるいは「各1通ずつ」が求められることもあります。
必ず志望校の募集要項(Requirements)を確認しましょう。
審査官が見るポイント:勝負はたったの「1分」
ここで、残酷な現実をお伝えしなければなりません。
人気大学の入学審査官(Admissions Officer)は、ピーク時には一人で数千人分の出願書類に目を通します。
そのため、1人の審査にかける時間は最初のスクリーニングでわずか5〜6分。
その中で推薦状1通に割かれる時間は、せいぜい「1分」程度と言われています。
たった1分で、「この学生は欲しい!」と思わせなければなりません。
つまり、「冒頭から結論(推薦する理由)を明確にする」こと、そして「具体的で印象に残るエピソードを入れる」ことが、何よりも重要になるのです。
「なんとなく良いことを書いてもらう」だけでは、その他大勢の書類の中に埋もれてしまいます。
「誰に」依頼すべきか?(人選の戦略)
推薦状の準備で最初に直面する悩み、そして最大の分岐点が「人選」です。
「有名な教授に頼んだ方がいい?」「部長と課長、どっちがいい?」
結論から言えば、選考官が求めているのはビッグネームではなく、「あなたという人間を、どれだけ深く、具体的に描写できるか(関係性の深さ)」です。
アカデミック(大学教授):関係性の深さが最優先
大学院進学において、基本となるのが大学の先生からの推薦状です。
人選の鉄則は以下の通りです。
- ベストな人選:
ゼミの担当教官や、卒業論文を指導してくれた教授。あなたの研究内容や性格を最もよく知る人物にお願いしましょう。 - 「肩書き」vs「関係性」:
一般的に、肩書きは「教授 > 准教授 > 講師」の順で評価が高いとされます。しかし、「名前だけの教授(あなたのことをよく知らない)」よりも、「深く関わった准教授」の方が圧倒的に有利です。
どれだけ立派な肩書きでも、内容が薄っぺらい推薦状(Generic Letter)では、審査官の心は動かせないからです。 - 専門分野との一致:
もし候補が複数いる場合は、あなたが大学院で専攻したい分野に近い先生を選ぶと、志望動機との一貫性が生まれます。
プロフェッショナル(職場の上司):実務能力の証言者
職歴がある場合やMBAを志望する場合は、職場からの推薦状が必要です。
- ベストな人選:
直属の上司(Manager / 課長など)。日々の業務を共にし、あなたの働きぶりを詳細に語れる人が基本です。 - 役職の高さについて:
部長以上」や「役員」といった高い役職者からの推薦状は、確かにお墨付き(Endorsement)として有効です。ただし、これもアカデミックと同様、「あなたの具体的な成果(数字やエピソード)」を知らない雲の上の人に頼むのはリスキーです。
理想は「直属の上司」と「その上の部門長」といった組み合わせですが、迷ったら「実務をよく知る人」を優先してください。
ビジネススクール(MBA)の場合、アカデミックな推薦状よりも「職場からの推薦状」が重視されます。
上司への依頼戦略や、MBA特有のアピール方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
推薦状の構成と「合格する内容」のポイント
推薦状のフォーマットに厳密な決まりはありませんが、審査官が読みやすい「王道の構成」は存在します。
基本的にはA4用紙1枚(500語程度)に収まる分量で、以下の3段落構成で作成するのがセオリーです。
基本構成:王道の「3段落」テンプレート
① 導入(Introduction)
関係性の説明: 推薦者が志願者を「いつから」「どのような立場で」知っているかを明記します(例:ゼミの指導教官として2年間)。
推薦の熱意: 冒頭で「彼/彼女を貴校のプログラムに強く推薦します(I highly recommend…)」と結論を述べます。
② 本文(Body)
具体的なエピソード: 評価の根拠となる事実を書きます。「学業成績」「研究への取り組み」「リーダーシップ」「チームワーク」など、アピールしたい強みを具体的な事例とともに描写します。
③ 結び(Conclusion)
改めての推薦: 最後に改めて「彼/彼女は貴校で成功すると確信しています」と太鼓判を押します。
連絡先: 「追加の情報が必要ならいつでも連絡してください」という一文と、署名・連絡先を添えます。
アピールすべき要素:形容詞を捨てて「動詞」と「数字」で語る
初心者がやりがちなミスは、「彼は優秀です」「彼女は努力家です」といった抽象的な形容詞(Adjective)を並べてしまうことです。
しかし、審査官が知りたいのは「なぜ優秀と言えるのか?」という根拠です。
合格する推薦状は、形容詞ではなく「動詞(Action)」と「数字(Result)」で書かれています。
「彼は優秀な(Excellent)学生であり、高い問題解決能力(High problem-solving skills)を持っています。」
(これでは説得力がなく、誰にでも当てはまってしまいます)
⭕️ OK例(行動と結果):
「彼は卒業論文において〇〇という困難なテーマを選び、独自のフィールドワークを実施しました(Conducted)。その結果、学科内で上位10%に入る(Ranked top 10%)成績を収めました。」
このように、「何をして(Action)、どうなったか(Result)」を具体的に書くことで、初めて評価に説得力が生まれます。
「強み」だけでなく「伸び代」にも触れる
完璧な人間はいません。「欠点はありません」と書かれた推薦状は、かえって嘘くさく見えてしまいます。
信頼性を高めるテクニックとして、あえて「大学院で学ぶべき課題(伸び代)」に触れるのも有効です。
「彼にはまだ〇〇の知識が不足している。だからこそ、貴校のプログラムでそれを学ぶ必要があるのだ」というロジックを組むことで、進学の必要性を強力にバックアップできます。
「学部時代のGPAが低い」「頼める教授と疎遠になっている」…そんな方でも諦める必要はありません。
推薦状を使ってGPAの低さをカバーする「逆転のテクニック」を、実録ベースで解説しました。
そのまま使える!英語フレーズ・例文集(Templates)
推薦状を一から英語で書くのは、ネイティブでない限り非常に困難です。
しかし、アカデミックな推薦状には「お決まりの言い回し」が存在します。
以下のテンプレートフレーズを組み合わせることで、失礼がなく、かつ格調高い推薦状の骨組みを作ることができます。ドラフト作成時にぜひ活用してください。
冒頭の挨拶(Salutation)
宛名が特定できている場合は個人名を書きますが、不明な場合は以下の表現を使います。
- To whom it may concern,
(関係者各位 / 最も一般的) - Dear Admissions Committee,
(入学審査委員会 御中) - Dear Admission Officer,
(入学審査担当者 殿)
導入・関係性の説明(Introduction)
書き出しで「誰を推薦するのか」「自分との関係性は何か」を明確にします。
- It is a pleasure to recommend Mr./Ms. [Name] for admission to your graduate program.
([名前]氏を貴校の大学院プログラムに推薦することを嬉しく思います。) - I have known [Name] for [Number] years as his/her [Professor/Supervisor].
(私は[教授/上司]として、[年数]年にわたり[名前]氏を知っています。) - As his/her seminar professor, I deem it a great pleasure to recommend [Name]…
(ゼミの担当教授として、[名前]氏を推薦することを大変嬉しく思います…)
強みを褒めるフレーズ(Body)
具体的なエピソードに加えて、客観的な評価を示す表現を盛り込みます。
- He/She is ranked within the top 5% of the class.
(彼/彼女はクラスの上位5%に入る成績を収めています。) - He/She possesses a rare combination of analytical rigor and original scholarly ideas.
(彼/彼女は厳密な分析力と、独創的な学術的アイデアの両方を兼ね備えています。) - He/She produced a thesis that demonstrated excellent insight.
(彼/彼女は優れた洞察力を示す論文を作成しました。)
- He/She was always proactive in discussions.
(彼/彼女は常に議論において主体的/積極的でした。) - He/She is an asset to our organization.
(彼/彼女は我々の組織にとって貴重な財産です。) - He/She is a quick learner who picks up new technology with great speed.
(彼/彼女は物覚えが早く、新しい技術を非常に早く習得します。)
結びの言葉(Closing)
最後に改めて推薦の意思を強調し、連絡先を提示して締めくくります。
- Therefore, I highly recommend [Name] without any reservation.
(したがって、私は[名前]氏を無条件に強く推薦いたします。) - I look forward to witnessing the impact he/she will have in the years ahead.
(彼/彼女が将来もたらすであろうインパクトを楽しみにしています。) - If any further information is required, please feel free to contact me.
(追加情報が必要な場合は、お気軽にご連絡ください。)
結語と署名(Sign-off)
- Sincerely, / Best regards,
(敬具) - [Name] (氏名)
- [Title] (役職・肩書き)
- [Contact Information] (電話番号・メールアドレス)

依頼から提出までの「5ステップ」完全フロー
推薦状の作成は、あなたが思っている以上に時間がかかります。
私自身、依頼してから手元に揃うまでに約3ヶ月かかりました。
「期限ギリギリになって先生と連絡がつかない!」といった事態を防ぐために、以下の5ステップで計画的に進めましょう。
STEP 1:スケジューリング(3ヶ月前ルール)
鉄則は、出願期限の3ヶ月前には依頼を打診することです。
教授や上司にとって、学生の推薦状を書くことは「優先順位の低い、業務外の仕事」です。
授業、研究、会議で多忙な中、隙間時間を縫って書いてもらうことになります。
「1週間で書いてください」などの急な依頼は、失礼にあたるだけでなく、断られる最大のリスクです。余裕を持って動き出しましょう。
STEP 2:依頼メールとアポイント
いきなり「推薦状をお願いします」というメール一本で済ませるのはNGです。
まずはメールでアポイントを取り、対面(またはWeb会議)で直接お願いする時間をもらいましょう。
この面談の場で、以下の2点を熱意を持って伝えます。
- なぜ留学したいのか(志望動機)
- なぜ先生(あなた)にお願いしたいのか
ただの事務作業として依頼するのではなく、「私の夢を応援してほしい」という姿勢を見せることで、推薦者も「一肌脱いでやろう」という気持ちになり、より熱のこもった推薦状を書いてくれるようになります。
STEP 3:ドラフト作成(Self-draftingの活用)
依頼した際、「忙しいから、下書き(ドラフト)は君が書いてくれないか?」と言われることが多々あります。
これは「面倒だな」と思う場面ではなく、「絶好のチャンス」です。
自分で下書きを書けるなら、アピールしたい強みやエピソードを自由に盛り込めます。
遠慮せず、第3章や第4章のテンプレートを活用して、自分の強みが伝わるドラフトを作成しましょう。
STEP 4:翻訳と校正(ネイティブチェック)
推薦者が英語ネイティブでない場合、以下のフローで作成するのが品質確保の鉄則です。
- 日本語で作成・合意:
まず日本語でドラフトを作成し、内容に事実誤認や誇張がないか、推薦者とすり合わせます。 - プロによるレビュー:
合意した日本語をもとに、生成AIで英語の叩き台を作成します。そのうえで、プロや英語ネイティブにレビューを依頼し、表現の精度・評価の強さ等を最終調整します。
書類に誤字脱字があるだけで、応募者の信頼性は大きく損なわれます。また、抽象的でテンプレート感の強い「AI臭い文章」は、審査官にはすぐに見抜かれます。だからこそ、最終的な品質保証は人が担うので、この工程には、必要な投資を惜しまないほうが賢明です。
STEP 5:提出
内容が完成したら、最終的な仕上げを行います。
- オンライン提出が基本:
かつては大学や会社のロゴ入り便箋(Letterhead)に印刷し、直筆サインをもらう形式が一般的でしたが、現在はオンラインフォーム経由の提出が主流です。出願ポータルから推薦者のメールアドレスを登録すると、大学から推薦者本人に専用リンクが送られます。推薦者は、そのリンク先のオンラインフォームに直接入力し、提出します。 - 重要なのは「設問適合」と「文字数管理」:
フォームには文字数制限や特定の設問(例:リーダーシップ、比較評価、弱みなど)が設定されています。そのため、レターヘッドよりも、各設問に合わせた内容設計と簡潔さが評価を左右します。
これでようやく、推薦状の完成です。






よくあるトラブルと対処法(Q&A)
推薦状の準備は、一筋縄ではいかないことの連続です。
「頼める人がいない」「英語ができない」といった壁にぶつかったとしても、諦める必要はありません。
よくあるトラブルとその解決策をまとめました。
Q. 推薦者(教授・上司)が英語を書けません。
A. 日本語で内容をフィックスすればOKです。
英語が堪能な教授や上司ばかりではありません。無理に英語で書いてもらって内容が薄くなるよりは、日本語で質の高い推薦文を書いてもらう方が得策です。
私自身も、英語が苦手な先生には日本語で依頼し、「日本語で受領 → AIで翻訳 → ネイティブチェック/プロレビュー → 先生による提出」という手順を踏みました。
重要なのは「中身」ですので、翻訳の手間を惜しまなければ問題ありません。
Q. お世話になった教授が退官していて連絡がつきません。
A. 志望校のアドミッションに相談し、代替案を交渉しましょう。
教授が退職していたり、亡くなられていたりして連絡が取れないケースは珍しくありません。
その場合は、志望校の窓口(Admission Office)に正直に事情を説明してください。
「別の学部の教授でも良いか」「職場の上司2名でも良いか」といった相談に乗ってくれます。
場合によっては、推薦状の枚数を減免してくれることもあります。
Q. どうしても推薦者が誰も見つかりません。
A. 推薦状が不要な国を選ぶか、社会人経験を積むルートがあります。
大学卒業から時間が経ちすぎていたり、人間関係の問題でどうしても頼める人がいない場合の最終手段です。
推薦状不要の国を探す:
実は、オーストラリアやニュージーランドの大学院では、基本的に推薦状が不要なケースが多いです。国を変えるだけで、出願のハードルが一気に下がります。
社会人経験を積む:
一旦就職し、数年働いてから「職場の上司」に頼む方法です。MBAや実務系大学院であれば、教授の推薦状がなくても「上司からの推薦状2通」で出願できる学校も多く存在します。
まとめ:推薦状は「点」ではなく「線」で考える
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
最後に、合格する推薦状を作るための最も大切なマインドセットをお伝えします。
それは、推薦状を単独の「点」として見ないことです。
入学審査官は、あなたの提出書類すべて(CV、エッセイ、テストスコア、推薦状)を並べて、あなたという人間を評価します。
もし、エッセイで「私はリーダーシップがあります」と主張しているのに、推薦状にその記述が一切なければ、説得力は半減してしまいます。
- CV(履歴書)で「事実」を示し、
- エッセイで「想い」を語り、
- 推薦状で「第三者の証言」を得る。
この3つが一本の「線(ストーリー)」として繋がったとき、あなたの出願書類は最強の説得力を持ちます。
あなたの留学への熱意が、推薦者に、そして海の向こうの審査官に届くことを応援しています!




海外大学院留学 攻略記事一覧












ボリューム満点な資料集、どうして無料なのですか?
資料集にあるものは、私たちが留学準備・試験対策の際、海外のサイトから集めてきた資料。
資料収集にかなり時間をかけたけど、お金はかけていなかったので、日本の学習者にも無料で提供することになった。
今後もこの資料集をどんどん充実させていきたいので、みんなもいい学習資料を見つけたら共有して欲しい!