



アメリカの大学へ出願を始めようとすると、最初に直面するのが「Common App(コモンアプリケーション)」です。
名前は聞いたことがあっても、実際にどう入力するのか、どんな書類が必要なのか、不安に感じている方も多いはずです。
Common Appは、1,000校以上の大学に一度の入力で出願できる便利なシステムです。
ただし、日本の大学出願とは違い、エッセイの提出や推薦状の依頼、成績証明の準備など、慣れない手続きがいくつもあります。最初は戸惑って当然です。
だからこそ大切なのは、仕組みを理解し、準備の流れを具体的にイメージしておくこと。
この記事では、これからCommon Appを使って出願する日本人高校生と保護者の方に向けて、基本から注意点、成功のコツまでを分かりやすく解説します。
目次
Common Appとは?
Common Applicationの概要
Common App(正式名称:Common Application)は、アメリカの大学出願を効率化するために作られたオンラインシステムです。
1つのアカウントを作成すれば、基本情報や学歴、課外活動、エッセイ、推薦状などをまとめて入力し、それを複数の大学へ送信できます。
大学ごとに異なる願書を一から作成する必要がないため、出願の手間を大きく減らせるのが特徴です。
利用可能な大学数と対象国
現在、Common Appには1,000校以上の大学が加盟しています。
アメリカ国内の名門私立大学から大規模州立大学まで幅広く対応しており、リベラルアーツ・カレッジなど小規模校も多く含まれます。
さらに、アメリカ以外にもカナダ、イギリス、ドイツ、シンガポールなど、一部の海外大学でも利用可能です。
つまりCommon Appは「アメリカ出願用」の枠を超え、国際的に広がりつつある出願システムと言えます。
アメリカ大学出願での必須ツール
アメリカの大学に出願する場合、Common Appは事実上の必須ツールです。
アイビーリーグをはじめ多くのアメリカの名門大学が加盟しており、留学生の大半がこのシステムを使って出願します。
もちろん、MITやカリフォルニア大学(UC)システムのように独自の出願方法を持つ大学もありますが、それらは例外的存在です。
日本の大学入試にたとえると「共通テストと願書システムが一体化したもの」に近く、アメリカ進学を考えるならまず理解すべき入り口です。
「アメリカ大学に出願する=Common Appを使う」という認識を持って準備を始めると安心です。
Common Appでできること
一括出願:複数大学に同じ願書を提出可能
Common Appの最大のメリットは、1つの願書を複数の大学に一括で提出できることです。
基本情報、学歴、課外活動、エッセイなどを一度入力すれば、そのまま加盟大学へ共有できます。
加盟校はアメリカ国内を中心に1,000校以上あり、名門私立大学から大規模州立大学まで幅広くカバーしています。
大学ごとに個別の願書を作成する手間が省けるため、特に複数校に出願する学生にとって効率性は非常に高いです。
ただし、大学によっては共通エッセイに加えて「補足エッセイ(サプリメンタルエッセイ)」を課す場合があります。
そのため、共通部分は一括で効率的に、個別部分は大学ごとに丁寧に準備する必要があります。各大学ごとに何が必要なのか、スプレッドシートなどで各自で管理しましょう。
推薦状・成績証明・エッセイなどの管理
Common Appは、単なる出願フォームではなく、出願書類の一元管理システムとして機能します。
推薦状
生徒がシステム内から先生を招待し、推薦状を依頼できます。
大学が指定している推薦者タイプ(Counselor、Teacher、Other Recommenderなど)のみ追加可能で、提出状況はダッシュボードで確認可能です。
成績証明書
多くの場合、在籍高校のカウンセラーがCommon Appを通じて直接提出します。国際生の場合、英語に翻訳された公式成績証明書が必要になるため、依頼は早めに行うことが重要です。
エッセイ
共通エッセイ(最大650語)を一度入力すれば複数大学に共有可能です。さらに、大学独自のサプリメンタルエッセイはそれぞれ追加で管理できます。
このように、Common Appを使えば必要書類を一箇所でまとめて管理でき、提出漏れを防ぐことができます。
出願校の締切管理機能
アメリカの大学の出願時期は、大学ごと・プランごと(EA=Early Action、ED=Early Decision、RD=Regular Decision)に異なります。
Common Appでは、各大学の締切がリスト化され、締切前のリマインド機能もあるため安心です。
ただし注意点として、締切時刻は大学の所在するタイムゾーンの23:59が基準となります。
たとえば米国東部時間で11月1日23:59締切なら、日本時間では11月2日の午後が締切です。
実際には「前日までに提出完了する」ことを目標にするのが安全です。アプリなどで各地域の時差を確認し、締め切り日時をダブルチェックすることを勧めます。

Common Appの出願ステップ
アカウント作成
まずはCommon Appの公式サイトでアカウントを作成します。
名前やメールアドレスを登録し、ログイン情報を設定します。毎年8月1日にシステムが更新されるため、その時点で新しい出願年度が始まります。
前年に入力した内容を引き継ぐ「ロールオーバー機能」もあるので、早めにアカウントを作っておいて問題ありません。

プロフィール入力(学歴・課外活動・テストスコア)
次に、自分の基本情報や学歴を入力します。ここで特に重要なのはActivities(課外活動)とHonors(表彰)の欄です。
- Activities:最大10件まで登録可能。各活動について150文字以内で説明します。学校の部活動、ボランティア、インターンシップなど幅広く記入できます。無理に10件埋める必要はなく、影響力が大きい活動から順に書くのがコツです。
- Honors(表彰・受賞歴):最大5件まで登録可能。各100文字以内で記入します。英検やTOEFLなどの資格試験、全国大会出場、表彰などを記入できます。
また、標準テストスコア(SAT、ACT、TOEFL、IELTSなど)もここで入力します。
ただし、Test-optional(スコア提出任意)の大学も増えているため、大学ごとに提出要件を確認することが大切です。
大学の追加と締切確認
Common Appの「College Search」から出願したい大学を追加します。
追加した大学は「My Colleges」にリスト化され、各大学の出願要件や締切が確認できます。
- Early Action(EA):例年11月1日締切が多い
- Early Decision(ED):11月1日または15日締切が一般的(合格すれば進学が拘束される)
- Regular Decision(RD):1月上旬が多い

エッセイ作成(共通+サプリメンタル)
出願の中でも最も時間がかかるのがエッセイです。
- 共通エッセイ:最大650語。全加盟校に共有される自己表現の中心となる文章です。テーマは複数の選択肢から選べます。
- サプリメンタルエッセイ:大学ごとに課される追加エッセイです。「なぜこの大学か」「多様性にどう貢献できるか」などが典型的なテーマです。サプリメンタルエッセイ提出が必須でない大学も多く存在します。
日本人学生にとって英語で650語の文章を書くのは大きな挑戦です。夏休み前から書き始め、複数回添削を受けることが合格の鍵となります。

推薦者招待
Common Appでは、生徒が推薦者を招待する仕組みになっています。
具体的には「Recommenders & FERPA」セクションから、先生の名前とメールアドレスを入力して招待を送ります。
推薦者の種類には以下があります。
- Counselor:必須。学校の進路指導の先生や担任が該当し、成績証明書も提出します。
- Teacher:1~2名が一般的。主要科目の先生に依頼するのが望ましいです。
- Other Recommender:大学が許可している場合のみ追加可能。部活動顧問やインターン先の指導者など。
日本の高校では推薦状の準備に時間がかかるため、高3の夏休み前には依頼を済ませるのが理想です。
先生にお願いするときは、志望理由や出願校リストを簡単にまとめて渡すとスムーズに進みます。

- Common Application 作成Guideはこちら → https://www.commonapp.org/apply/first-year-students
FERPA Waiverとは?
FERPA(Family Educational Rights and Privacy Act)とは、アメリカの「教育記録に関するプライバシー法」のことです。
学生本人には、自分の成績や推薦状などの教育記録を閲覧する権利があります。
Common Appでは、推薦状を依頼する前に「自分が推薦状を閲覧する権利を放棄するかどうか(Waive or Not Waive)」を選ぶ必要があります。これがFERPA Waiverです。
- Waive(権利を放棄する)を選んだ場合
→ 推薦状の内容を自分では見られません。その代わり、推薦者(先生)は「本音を書ける」と安心でき、推薦状の信頼性が高まります。アメリカの大学も、通常はこちらを選ぶことを想定しています。 - Not Waive(権利を放棄しない)を選んだ場合
→ 推薦状を後から閲覧できる権利を保持します。ただし、大学側は「推薦者が遠慮して書いたのでは?」と感じ、信頼度が下がる可能性があります。
基本的には「Waive(放棄する)」を選ぶのが一般的です。
そうすることで、先生も安心して推薦状を書けますし、大学側からも誠実に見られます。
日本の高校ではこの仕組みに馴染みがないため、先生に説明するときは「アメリカの出願ルールで、通常は閲覧権を放棄することが前提」と伝えると理解してもらいやすいです。

日本人が注意すべきポイント
成績証明書・推薦状の英訳依頼のタイミング
アメリカの大学出願では、成績証明書(Transcript)や推薦状は英語で提出する必要があります。
多くの日本の高校には英語版の成績証明書が用意されていないため、学校側に依頼して翻訳・発行してもらう必要があります。
準備には時間がかかるので、高3の夏休み前には依頼を済ませておくのが理想です。
推薦状も同様に、依頼から完成まで数週間以上かかることがあります。先生に依頼する際には、志望理由や出願校リストを簡単にまとめた資料を渡すと、先生もスムーズに書きやすくなります。


英語エッセイのハードルと準備の必要性
Common Appの共通エッセイ(最大650語)は、全ての出願校に共有されるため非常に重要です。
さらに、多くの大学が独自のサプリメンタルエッセイを課しており、「なぜこの大学か」「将来どのように社会に貢献したいか」といったテーマが多く出題されます。
日本人高校生にとって、英語で650語以上の文章を論理的に書くのは大きな挑戦です。
直前に書き始めると間に合わなくなるので、夏休み前から下書きを作り、複数回の添削を受けることが必須です。
最初は日本語で内容を整理し、それを英語に置き換えてからネイティブや指導者に見てもらう流れが有効です。
出願締切の種類(EA/ED/RD)
アメリカの大学には主に次の3種類の出願プランがあります。
- Early Action(EA):例年11月1日締切が多く、12月中旬に合否が出ます。合格しても進学義務はありません。
- Early Decision(ED):11月1日または15日締切が多く、合格すればその大学に必ず進学する義務があります。第一志望が明確な場合に選択します。
- Regular Decision(RD):1月上旬が締切の大学が中心で、合否は3〜4月に発表されます。
注意すべきは締切時刻が大学所在地のタイムゾーンで23:59に設定されている点です。例えば米東部時間で11月1日23:59なら、日本では11月2日の午後が締切になります。
時差の影響で「うっかり遅れた」ということがないよう、日本時間で前日までに提出する習慣をつけましょう。

SAT/ACT不要校(Test-optional)の増加
近年、アメリカの大学ではTest-optional(標準テスト提出が任意)の方針をとる大学が増えています。
特にパンデミック以降、この傾向は顕著で、現在も多くの大学がSATやACTの提出を必須としていません。
ただし、注意点もあります。
- 名門大学でもTest-optionalを採用している場合がありますが、提出した方が合格の可能性が高まるケースもある。
- 専攻によっては依然としてSAT/ACTを重視する学部がある。
- 英語力を証明するためのTOEFLやIELTSは原則必須であり、これらのスコアは省略できない。
そのため、自分の強みになるスコアは積極的に提出する、一方で不十分な場合はTest-optionalを活用する、という戦略的な判断が必要です。

よくある質問(FAQ)
Common Appは無料?
Common Appのアカウント作成や利用自体は無料です。
ただし、大学に出願する際には1校ごとに出願料(50〜90ドル程度)がかかります。
一方で、500校以上の大学は出願料を無料にしており、経済的に困難な場合はFee Waiver(出願料免除)を申請することも可能です。
免除は自己申告制で、家庭の経済状況や支払い困難を理由に申請できます。
出願校数の上限は?
Common Appで出願できる大学の数には上限があり、最大20校までです。
20校すべてに出願する必要はなく、安全校・マッチ校・挑戦校のバランスをとりながらリストを作ることが推奨されます。

日本の大学も出願できる?
Common Appは主にアメリカの大学向けですが、一部の大学は海外キャンパスでも対応しています。
例えば、テンプル大学ジャパンキャンパスなどがその例です。
ただし、日本国内大学の大半はCommon Appを利用できず、出願は各大学の独自システムで行う必要があります。
エッセイは大学ごとに異なる?
はい。Common Appでは共通エッセイ(最大650語)を一度入力し、加盟しているすべての大学に送ることができます。
ただし、多くの大学はさらにサプリメンタルエッセイ(補足エッセイ)を課しており、テーマは大学ごとに異なります。例えば「なぜこの大学を志望するのか(Why Us)」や「多様性にどう貢献できるか」などが典型的です。
そのため、共通エッセイは自己紹介、サプリメンタルは大学への適合性という役割分担を意識して書き分ける必要があります。
推薦状は誰に頼めば良い?
Common Appの推薦状には主に以下の種類があります。
- Counselor推薦:必須。学校の担任や進路指導の先生が担当し、成績証明書の提出も行います。
- Teacher推薦:1〜2名が一般的。主要科目(英語・数学・理科・社会など)の先生に依頼するのが望ましいです。
- Other Recommender:大学が許可している場合に追加可能。部活動顧問やインターン先の指導者など。
依頼は高3の夏休み前までに行うのが理想です。
先生にお願いする際は、出願校リストや志望理由を簡単にまとめて渡すと、具体的で説得力のある推薦状を書いてもらいやすくなります。
アメリカ大学出願成功のコツ
高2夏までに準備を始める
アメリカ大学出願は、日本のように試験一発勝負ではなく、活動実績・エッセイ・推薦状といった多面的な評価で決まります。
そのため、直前になってから準備するのでは間に合いません。
特に重要なのが次の3点です。
- 英語試験(TOEFL/IELTS、SAT/ACT):スコアメイクには時間がかかるため、高2夏までに学習を本格化。
- 課外活動(Activities):Common Appでは最大10件まで入力できますが、質>量が基本。高2夏までに「継続性」や「成果の見える活動」を意識して取り組むことが有効です。
- 自己分析:エッセイ準備のために「自分の強み」「進学の目的」を整理しておくと後でスムーズに書けます。
推薦状依頼は早めに(夏休み前が理想)
推薦状は生徒自身が先生をCommon Appに招待し、オンラインで依頼する仕組みです。
しかし、日本の高校の先生は英語推薦状に慣れていないケースが多く、作成に時間がかかります。
- 依頼のタイミング:高3の夏休み前が理想。
- 依頼時の工夫:志望理由や出願校リストを簡単にまとめた資料を先生に渡すと、より具体的で説得力のある推薦文を書いてもらいやすくなります。
- 注意点:FERPA(教育記録閲覧権利)の放棄設定を済ませてから招待を送る必要があります。多くの場合「放棄する(waive)」を選ぶのが一般的です。
エッセイは複数回添削
Common Appの共通エッセイは最大650語で、全大学に送られる最重要書類です。
さらに大学ごとにサプリメンタルエッセイが課されるため、合計で数千語の執筆が必要になることもあります。
- スケジュール感:高3の夏休み前から下書きを開始し、秋には完成版を仕上げるのが理想。
- 書き方の流れ:①日本語で骨子を作る → ②英語に翻訳 → ③複数の先生や指導者に添削してもらう。
- ポイント:1回の添削で完成させようとせず、3〜4回の推敲を重ねることが前提です。
出願校リストは現実的に(安全校・挑戦校のバランス)
Common Appでは最大20校まで出願できますが、むやみに数を増やすとエッセイや書類準備に追われ、クオリティが下がってしまいます。
出願校は以下のようにバランスをとると安心です。
- 挑戦校(Reach):合格率が低く難関だが挑戦したい大学(例:アイビーリーグ、トップ州立大など)
- マッチ校(Match):自分の学力・実績と合致し、合格可能性が高い大学
- 安全校(Safety):ほぼ確実に合格できる大学
この3つを組み合わせることで、万一第一志望に届かなくても進学先を確保できます。
他にも提出しなければならないエッセイの数や重さなども考慮しながら、学校を選定することを勧めます。
出願校を選ぶ際は、費用や立地、学部の強みも考慮し、現実的かつ納得感のあるリストを作りましょう。
正規留学を本気で考え始めたら:並走型サポートという選択肢
Common Appを通じた出願は、単なる“フォーム入力”ではありません。
エッセイの構成、推薦状の依頼、大学ごとの要件整理、スコア提出——。
複雑な手続きの中で、自分一人では限界を感じる瞬間が訪れます。
そんなとき、「並走型・海外大学出願サポート」が力になります。
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まとめ
アメリカ大学進学を目指す上で、Common Appは欠かせない出願の窓口です。
ほとんどの大学が加盟しており、この仕組みを理解して使いこなすことが合格への第一歩となります。
もちろん、日本人にとっては成績証明書や推薦状の英訳、英語でのエッセイ執筆、時差を意識した締切管理など、独特のハードルがあります。
ですが、あらかじめ注意点を押さえて準備していけば、確実に乗り越えられるものです。
大切なのは、できるだけ早めに動き出すこと。高2の夏から準備を始めれば、余裕を持ってテスト勉強やエッセイ作成に取り組めます。
早く行動するほど、出願できる大学の選択肢が広がり、チャンスも大きくなります。
「ちゃんと準備できるだろうか」と不安に思うのは自然なことです。でも、一歩ずつ進めれば必ず形になります。Common Appを味方につけて、自分の未来を切り開いていきましょう。










