





「簿記の次、何を目指せばいいんだろう?」
日商簿記2級・1級を取得したり、経理として実務経験を積んでいると、ふとそんな疑問が浮かぶことはありませんか?
今のままでも仕事には困らないけれど、「このまま国内業務だけでいいのか」「もっと専門性や年収を上げたい」と感じている方も多いはずです。
そんな中で、最近注目されているのがUSCPA(米国公認会計士)という選択肢。
「英語の試験って難しそう」「アメリカの資格が日本で役に立つの?」と感じるかもしれませんが、実は簿記経験者だからこそ、有利に進められるポイントがたくさんあるのです。
本記事では、
- 簿記とUSCPAの違い
- 簿記がどこまで通用するのか
- USCPA取得でどんなキャリアが拓けるのか
- そして、簿記取得者におすすめの学習法や勉強スケジュールまで、
具体的にわかりやすく解説します。
「今の自分のスキルを、もっと広く、もっと高く活かしたい」というあなたの次の一歩に、ぜひ役立ててください。
簿記とUSCPAの違いとは?
日本国内で会計を学ぶと、まず「簿記」から始める人が多いでしょう。
では、その次のステップとして注目されているUSCPA(米国公認会計士)とは、どんな違いがあるのでしょうか?
ここでは、簿記とUSCPAの違いを3つの観点から比較していきます。
対象範囲とレベル感の違い
まず大きな違いは、カバーしている内容の広さと深さです。
- 日商簿記(特に2級まで)は、主に企業の経理担当者を想定しており、「仕訳」や「財務諸表作成」といった実務寄りの基礎スキルを学びます。日本の会計基準(J-GAAP)に沿った内容です。
- 一方、USCPAは、会計だけでなく、監査・税務・ビジネス法務・ITリスク管理まで幅広く網羅しており、対象も日本にとどまらず国際ビジネス全体を見据えています。加えて、IFRS(国際会計基準)やGAAP(米国会計基準)も出題範囲に含まれます。
つまり、簿記は「会計実務の基礎」、USCPAは「会計・監査・ビジネス全体を理解する国際資格」といえます。

資格取得の目的(国内実務 vs 国際資格)
資格の目的も大きく異なります。
- 簿記資格は、就職や転職時に「経理スキルの証明」として使われるケースが多く、特に中小企業や日系企業の経理職では高く評価されます。
- 一方、USCPAはグローバルに通用する会計士資格として、外資系企業やグローバルファーム、海外進出企業などでのキャリアアップに効果的です。特にBig4監査法人やコンサルティングファームでは、USCPAを保有していることで「英語×会計」の即戦力として見なされることもあります。
国内実務の効率化を目的とした「簿記」に対し、USCPAは「グローバルキャリアへのパスポート」のような位置づけです。

必要な英語力と試験内容の比較
USCPAは試験もすべて英語で行われるため、語学面でのハードルがあります。
項目 | 日商簿記 | USCPA |
試験言語 | 日本語 | 英語 |
出題範囲 | 日本の商業簿記・工業簿記(会計) | 会計・監査・税務・ビジネス法務・IT管理など |
試験形式 | 計算問題・選択+記述問題(レベルによる) | CBT(コンピュータ試験)、選択・計算・記述・事例問題など |
英語力 | 不要 | 読解・会計英語力が必須(TOEIC700相当〜) |
ただし、USCPAは会話力やスピーキングは不要なので、会計用語に慣れればリーディング中心の英語対策でも突破可能です。
簿記で会計の基礎がある人ほど、英語に特化した学習でUSCPA合格が近づきます。


簿記資格を持っているとUSCPAに有利?
結論から言うと、簿記の知識はUSCPAの学習において大きなアドバンテージになります。
特に日商簿記2級以上を持っている方であれば、複雑な会計処理や仕訳に慣れているため、USCPA特有の出題にもスムーズに対応できるケースが多いです。
FARやBARで活かせる知識(新試験制度対応)
USCPA試験では、FAR(Financial Accounting and Reporting)と、選択科目の一つであるBAR(Business Analysis and Reporting)が、簿記取得者にとって特に相性の良い科目といえます。
FAR(必須科目)
FARは財務会計を扱う中核科目で、仕訳・精算表・財務諸表の作成といった日商簿記の内容がそのまま応用できます。
- 現金・売掛金・棚卸資産などの勘定処理
- 減価償却・引当金・外貨換算などの調整項目
- 連結会計や税効果会計(簿記1級相当)にも対応
実務経験や簿記の学習でこれらに慣れていれば、FARの前半は復習感覚で進められるケースも多いです。
BAR(選択科目)
BARは旧BECの経営・管理会計領域の一部を引き継ぎつつ、データ分析・財務報告の読解力・経営意思決定における数値活用に焦点を当てた新科目です。
- CVP分析や原価計算、予算管理といった工業簿記の内容
- 財務諸表分析や指標(ROE・ROA・流動比率など)の読解
- 数値をもとに経営判断を下すケーススタディ問題
これらは簿記2級〜1級で学ぶ内容と重なっているため、理解が早く、応用も効きやすいのが特徴です。


日商簿記2級・1級はどこまで役立つか
簿記2級
商業簿記・工業簿記の基礎力が身についているため、FAR・BECに対して強く、仕訳問題への抵抗感が少ないです。ただし、米国基準(US GAAP)との違いには注意が必要です。
簿記1級
連結会計・税効果会計・外貨換算といった高度な論点をカバーしているため、USCPAのFARとも重なる内容が多く、相性が非常に良いです。また、試験勉強のボリュームに慣れているため、長期戦にも強い傾向があります。
補足すると、簿記1級は日本の公認会計士試験の一部科目と重なるほど難易度が高く、USCPAのベースとしては最強クラスと言えます。


簿記経験者が感じるUSCPAの壁とは?
とはいえ、簿記経験があるからといってすべてが楽になるわけではありません。特に以下の3つの壁は、簿記出身の受験生がよく直面します。
- 英語の壁:問題文も解説もすべて英語。会計知識はあるのに、英語の読解で時間がかかるケースは非常に多いです。
- US基準の違い:日本の会計基準と異なる点(例:収益認識、リース会計など)に戸惑うことがあります。
- 試験形式の違い:記述式ではなく、CBT形式で計算+選択+事例(Task-based Simulation)という構成に慣れるまでに時間がかかることも。


USCPA取得で広がるキャリア
USCPA(米国公認会計士)を取得すると、キャリアの選択肢は一気にグローバルに広がります。
特に日本国内で簿記を学んできた人にとって、USCPAは「世界で戦える武器」になります。
ここでは、代表的な進路と、その強み、実際の年収感までを整理して解説します。
監査法人・外資経理・Big4コンサルへの道
USCPA取得者にとって最もポピュラーな進路のひとつが監査法人(特にBig4)や外資系企業の経理部門です。
- 監査法人(PwC、EY、KPMG、Deloitte)では、USCPAを持っていることで「国際会計基準」「英語での業務対応」ができる人材として高く評価されます。特に、日系企業の海外子会社の監査や、海外案件を扱うチームでの採用が活発です。
- 外資系企業の経理・財務部門では、米国基準での決算対応や、親会社とのレポーティングにUSCPAの知識が直結します。
- コンサル業界(Big4のアドバイザリー部門など)では、会計だけでなく、税務・M&A・企業価値評価などの分野でUSCPA保有者が活躍しています。簿記出身者にとって、業務の幅が広がるキャリアチェンジのチャンスです。

海外勤務・リモートワークにも強い理由
USCPAのもう一つの強みは、「日本にいながらもグローバルな働き方が可能」になることです。
- 海外勤務:アジアやアメリカの現地法人に出向・転籍する際、USCPA保有者は優先的に選ばれるケースが多く、特に英語での財務・監査スキルを評価されます。
- リモートワーク:外資系・グローバル企業では、世界中のチームとオンラインで連携する働き方が一般的。USCPAを持っていると、英語での会計用語や資料に抵抗なく対応でき、「リモートでも任せられる人材」として重宝されます。
最近では、海外在住日本人がUSCPAを取得し、現地の経理・監査職に就く事例も増えています。
取得後のライフスタイルの選択肢が格段に広がるのがUSCPAの魅力です。
年収・ポジションの実例比較
USCPAを取得することで、年収面・役職面でも明確なステップアップが可能です。以下は、実際の求人情報や転職事例に基づく参考データです。
キャリアステージ | 簿記2級保持者 | USCPA保持者 |
年収目安(20代後半) | 400〜550万円 | 550〜800万円 |
典型的な職種 | 経理・決算担当 | 監査法人スタッフ、外資経理、コンサル |
キャリアの幅 | 国内中心 | 国内外・M&A・グローバルPJなど多数 |
特に英語力とUSCPAを組み合わせることで、年収1,000万円以上のポジションも十分に現実的です。
転職サイトで「USCPA」で検索すると、年収600〜1,200万円クラスの求人が多数見つかることからも、その価値の高さがうかがえます。


USCPAはどんな人に向いている?
USCPAは「英語×会計」という高度なスキルが求められる資格ですが、すべての人におすすめというわけではありません。
ここでは、特に簿記経験者の中で、どんな人がUSCPAに向いているのかを解説します。
簿記との親和性が高い人の特徴
USCPAはまったくの未経験者にはハードルが高く感じられますが、簿記を学んだ経験がある人には非常に相性の良い資格です。
以下のようなタイプの人は特にUSCPAとの親和性が高いと言えます。
- 仕訳や帳簿作成に苦手意識がない人
→ FAR(財務会計)の多くの分野でスムーズに学習できます。 - コツコツ勉強するのが得意な人
→ 簿記と同様、USCPAも反復学習がカギ。地道な努力が報われる試験です。 - 経理実務や会計ルールに興味がある人
→ 学んだ知識が現場でそのまま役立ち、実務と試験勉強がリンクします。
簿記は「日本語で会計を学ぶ第一歩」、USCPAは「英語でビジネス全体を理解するステップアップ」なので、ステージを一段上げたい人にはうってつけの資格です。


将来のキャリア像と適性チェック
USCPAは資格そのものよりも、「その後にどんなキャリアを築きたいか」で向き・不向きが分かれます。
USCPAが向いている人の特徴
- 海外で働きたい/外資系に転職したい人
- 年収アップやポジションアップを目指している人
- 英語力を活かした仕事をしたい人
- 将来的に会計×ITやコンサル分野に進みたい人
USCPAがあまり向かないケース
- 英語アレルギーが強く、長期的に克服する意欲もない
- 国内企業で経理一本でキャリアを終えるつもり
自分のキャリアビジョンに「グローバル」「スキルアップ」「専門性」というキーワードがあるなら、USCPAは投資価値のある選択肢です。


費用対効果はどう考える?
USCPAは資格取得までに約80〜100万円程度の費用がかかることが一般的です(予備校受講+受験費用含む)。これを高いと見るか、安いと見るかは「リターン次第」です。
費用項目 | 金額の目安 |
学習教材・講座 | 約50〜80万円(オンライン or 通学) |
試験関連費用 | 約20万円(受験料・申請費など) |
合計 | 約80〜100万円 |
しかし、USCPAを取得すれば…
- 年収+100〜300万円のアップ
- 転職成功率の向上(求人市場での差別化)
- 海外勤務やリモート勤務など働き方の自由度向上
これらの点を踏まえると、長期的に見れば十分に元が取れる投資であることが多いです。
特に20代・30代で取得できれば、将来のキャリア全体に与える影響は非常に大きいです。
まとめ|簿記取得者こそUSCPAで一歩先へ
USCPAは、単なる“海外の資格”ではありません。
すでに簿記を学び、会計の基礎を持つ人にとっては、次のキャリアを切り拓くための強力なステップアップ資格です。
- 会計・監査・税務・経営の幅広い知識を英語で身につけられる
- 監査法人や外資経理、グローバル企業への道が開ける
- リモート勤務や海外就職など、多様な働き方が可能になる
- 年収アップや転職市場での希少性にも直結する
もちろん、英語力や費用、学習時間などのハードルはありますが、簿記で培った基礎力があれば、USCPAは十分に現実的な目標です。
「今のままで終わりたくない」「もっと広い世界で会計の力を活かしたい」
そう思ったなら、USCPAはその第一歩にふさわしい選択肢です。


